最新記事

感染症対策

ファウチ所長、トランプが去って「解放された」

Fauci 'Liberated' With Biden After Feeling Inhibited by Trump Repercussions

2021年1月22日(金)15時35分
ジェニー・フィンク

アメリカのコロナ感染対策はこれからが本番(1月21日、バイデンと会うためホワイトハウスに到着したファウチ) Jonathan Ernst-REUTERS

<新政権になって「科学」に基づく政策ができるようになり「解放感を覚える」と会見で明かした>

米国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、新型コロナウイルス対策をめぐってドナルド・トランプ前大統領と幾度となく衝突した。ジョー・バイデン新政権が発足して、ファウチはこれで気兼ねなく「科学」に基づく政策ができるようになった、と語った。

ロナルド・レーガン以降の全ての大統領に、感染症関連の助言を行ってきたファウチは、アメリカの公衆衛生対策における主要人物として高い評価を受けている。しかしトランプは日常的にファウチとは異なる主張を展開し、感染症の専門家である彼の指摘を頭ごなしに否定した。両者は対立していると報じられ、トランプがファウチを「更迭しようとしている」と何度も囁かれた。

ファウチはバイデン大統領就任翌日の1月21日にホワイトハウスで行った会見の中で、「過去のことについて語る」のは気が進まないとしつつも、トランプ政権時代は大統領と矛盾したことを言わなければならず「つらかった」と語った。「自分が何かを言えば必ず、なんらかの反撃に遭った。だからここに立って自分の知っていることを話し、証拠や科学を提示して、科学に自ら語らせることができるのには、解放感を覚える」

変異種懸念も「ワクチンの効果がない訳ではない」

アメリカでは19日に、新型コロナウイルスによる死者が40万人を突破した。1年足らずで、第2次世界大戦で死亡した米兵よりも多くの人が死亡したことになり、感染者数は累計で2450万人近くにのぼっている。

米国内で死者や入院者の数が増えつづけるなか、世界は新型コロナウイルスの「変異種」という、もう一つの差し迫った脅威にも直面している。イギリスで確認された変異種は、通常のウイルスよりも感染力が高いことが分かっているが、ファウチがもっと懸念しているのは、ブラジルと南アフリカで確認された変異種だ。

ブラジルと南アフリカの変異種は、入院患者の治療の一環として使われているモノクローナル抗体の有効性に影響を及ぼすことが確認されている。ファウチは、この変異種がワクチンの効果を減弱させる可能性があると述べたが、それでも「ワクチンの効果がない訳ではない」とも強調した。

ファウチは、ワクチンには「(感染拡大を)和らげる作用」があると指摘。それを考えれば、少しばかり効果が減弱しても「十分に効果的と言える基準を満たす」だろうとの考えを示した。「ウイルスの複製(拡散)が起こらなければ、変異も起こらない。そして多くの人がワクチン接種を受けて免疫をつけることで、その複製を抑制することができ、ひいては変異種の発生によってワクチンの効果が減弱する事態も避けられる。だからこそ、できる限り多くの人にワクチン接種を行う必要があるのだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの金融政策、「漸進主義」が奏功=レーン理事

ビジネス

ECB、段階的な利下げを 慎重姿勢維持必要=独連銀

ワールド

NY南部連邦地検トップが辞任へ、FTX関連など著名

ワールド

G7、共通の見解模索 ネタニヤフ氏逮捕状発行で=伊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 7
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    またトランプへの過小評価...アメリカ世論調査の解け…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中