中国の途上国待遇を許すな、今こそ「契約」を仕切り直す時
REWRITE THE CONTRACT
Thomas Peter-REUTERS
<バイデン新政権にとって、外交面で緊急を要する課題は何と言っても「中国」。20年前の契約に反するこの異質な大国に対し、3つの要求をすべきだ>
(本誌「バイデンvs中国」特集より)
1月20日に晴れてアメリカ大統領となるジョー・バイデンは、真っ先にパリ協定への復帰とWHO(世界保健機関)への残留を表明し、WTO(世界貿易機関)の再生にも取り組むという。
喜ばしい決断だが、前任者ドナルド・トランプの残した負の遺産はあまりに甚大で、当面は内政で手いっぱいだろう。
しかしアジアの視点で言わせてもらえば(筆者はインド政府の元経済顧問)、外交面でも緊急を要する課題が3つある。1に中国、2に中国、3に中国だ。
今の中国は異質過ぎて全面的には手を組めず、大き過ぎて無視も封じ込めもできず、経済的な結び付きが強過ぎて今さら縁は切れない。それを前提として、さてアメリカはいかなる原則の下で中国との関わりを維持していけばいいか。
20年前、アメリカ(と国際社会)は、中国も豊かになれば経済的・政治的に開かれた国となり、国際秩序を乱したりはしないと考えた。2001年に中国のWTO加盟を認めたのも、そういう暗黙の了解ないし「契約」があればこそだった。
しかし中国は変わってしまった。予想以上に豊かで巨大な貿易国家になっただけでなく、習近平(シー・チンピン)が国家主席となってからは統制・独裁色を一段と強め、内向きで国家主導の資本主義の道を突き進んでいる。そして近隣の台湾やオーストラリア、インド、フィリピン、ベトナム、日本に脅威を与えている。
これは想定外だ。通貨政策や知的財産権など、20年前の契約を表面的に守っている部分はあるが、契約の精神には反している。こうなった以上、アメリカと国際社会は契約の仕切り直しを求める権利があるし、その権利を行使すべきだ。
そもそも、中国はもはや貧しい国ではない。それなのに今も途上国と見なされ、国際貿易の諸ルールで有利な扱いを受けている。途上国待遇は取り消さねばならない。
第2に、中国は(とりわけ2004年から2010年にかけて)経済競争力を維持するための人為的な為替操作を行ってきた。これは明らかに契約の精神に反する。国際社会は不当な為替操作を禁じるルールの明文化と、違反に対処する方法を確立すべきだ。
第3に、WTOに加盟した中国には国有企業を特別扱いしない責任がある。しかし現実には、政府が直接・間接的に果たす経済面での役割は大きくなる一方だ。これを是正するにはWTOのルールを改定・強化し、より公平な競争条件を確保する必要がある。