七五三にしか見えない日本の成人式を嘆く
11日に横浜アリーナで開催された成人式の会場付近で警察官ともみ合いになる参加者 Issei Kato-REUTERS
<成人した者を祝福するという趣旨から、成人した者が感謝して志を誓う機会へと変えてはどうか>
コロナ禍の真っ只中に迎えることとなった今年の成人の日。日本では今年度、124万人が成人になる。本来なら、新年明けの三連休に開催が予定されていた成人式だが、大きく影響が及んだ。キャンセルされる成人式もあれば、オンラインに切り替えたところや延期されたところもあった。
通過儀礼を大事にする日本は、初宮参りに始まり、七五三などさまざまなイベントがあるが、成人式は結婚前の最大の晴れ舞台。前々から振袖姿でのこの日を思い描いていた本人はもちろん、その姿を目に焼き付けようと楽しみにしていた親御さん、着物関連の商売に関わる人々の心中はいかばかりか。
成人を迎える学生も多いが、コロナ対策により8割の大学などはオンラインやオンデマンドとなり、70年代の学生運動以来の事態だろうが、大学に数回しか行っていない者が多数派となっている。併せてオンラインなら実家からでも受講が可能となったが、しかし、いつ対面講義が再開されるかも分からず、不景気の中で無駄な二重家賃に苦しむ家庭も出てきている。踏んだり蹴ったりの状況であることを思うと胸が痛む。今、明るい未来を描くことはなかなか難しいかもしれないが、とにもかくにも成人を祝福したい。
「成人式」は世界の常識ではない
さて、いつの間にか新宿区が成人の日のニュースの常連となった。市区町村別で見た場合の外国人の数そのものと対日本人比率の高さが目立つ行政区ではあるが、留学生集住地区ということもあり、この地区の新成人4109人のうちの約半分が外国人だ。日本の未来を一足先に覗き見る意味においても、新宿区の成人の日のニュースが大きな役割を果たしていることは間違いない。
日本の成人式に楽しんで参加する外国人は実に多い。日本文化を楽しむ上で格好の機会であることは言うまでもない。と言うのも日本では年に一度のルーティンと化している「成人式」は、世界の常識ではない。日本ならではの風物詩である。ましてや「成人の日」を国民の休日にし、税金を投入して、さらには全国一斉に祝うともなると世界の常識からますます遠ざかる。
私などは職業がら留学生に囲まれているが、彼らに「成人式」について聞き取りをしても、また、自力で探しても見渡せる範囲においては日本の他には見つからない。むろん全くないわけではないが、あるとしても日本とは180%違う景色がそこにある。アフリカの部族によっては成人になった証として、それこそ命がけのバンジージャンプや、蟻が群がる手袋に手を突っ込み噛まれる痛みに耐えることなどを求める儀式が開催されるという。少なくとも無条件に「おめでとう」とチヤホヤされる景色はそこにはない。