最新記事

アメリカ政治

米下院、トランプの弾劾訴追決議案を可決 上院で裁判へ

2021年1月14日(木)10時25分

米下院は13日、トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂に乱入した事件を巡り、反乱を扇動したとして大統領を弾劾訴追する決議案を採決し、232対197の賛成多数で可決した。

共和党からは10人が賛成票を投じた。今後、上院で弾劾裁判が開かれることになる。

トランプ氏は2回の弾劾訴追を受けた史上初の米大統領となった。

広告

ただし、トランプ大統領の4年の任期が終わりバイデン氏が大統領に就任する1月20日までに、トランプ氏の罷免が実現する公算は小さいとみられている。

上院共和党トップのマコネル院内総務は、弾劾裁判の即時開始を求める民主党に対して、トランプ氏の退任までに裁判を終える時間はないとして、要求を拒絶した。

下院の弾劾訴追決議案可決後、トランプ大統領はツイッターに動画を投稿したが、弾劾訴追に関しては言及しなかった。動画では、自身の支持者らが連邦議会議事堂に乱入した事件を巡って、依然として責任は認めなかったが、暴力行為を非難すると強調した。

トランプ氏は「集団での暴力行為は、私が信じるものすべてに反する。私の本当の支持者は、政治的暴力を是認しない。本当の支持者は法と秩序を無視しない」とした。

この日の下院での採決は、ライフルで武装した州兵が議事堂の内外を警備する物々しい雰囲気の中で行われた。

民主党のペロシ下院議長は採決に先立ち「米国の大統領が今回の暴動をあおった」と断じ、トランプ氏は「去らねばならない。われわれ皆が愛する国に対する明白かつ現実の脅威だ」と訴えた。

ペロシ議長は可決後、弾劾条項に署名。「悲しい気持ち(で署名した)。わが国への影響を考えると、胸が張り裂けるようだ」とコメントした。

民主党の大統領候補指名を目指したこともあるフリアン・カストロ議員は、トランプ氏は「歴代の米大統領の中で最も危険な人物」と強調。マキシン・ウォーターズ議員は、トランプ氏は内乱を望んでいると非難、ジム・マクガバン議員は大統領が「クーデターの試みを扇動した」とした。

これまでに弾劾訴追を受けた米大統領は、トランプ氏(2019年)、ビル・クリントン氏(1998年)、アンドルー・ジョンソン氏(1868年)の3人。いずれも、上院の裁判では「無罪」と認定され、罷免は免れている。
=====

トランプ氏弾劾訴追、共和党から批判の声も

共和党からは、公聴会など通常の手続きを経ず弾劾訴追を急いだ民主党の手法を疑問視する声も上がり、一部の共和党議員は、国の結束と融和を優先して大統領罷免への動きを断念するよう民主党に求めた。

下院共和党トップのマッカーシー院内総務は、議事堂乱入事件の責任はトランプ大統領にあるとしつつも、「これほど短い期間で大統領を弾劾訴追するのは誤り」との考えを示した。

ジム・ジョーダン氏など、トランプ大統領への忠誠心が厚いとされる議員らは、政治的な利益のために行動していると民主党を強く批判。ジョーダン議員は「大統領を追い落としたいだけ」などとした。

上院の弾劾裁判、開始は来週以降か

米憲法の規定によると、下院で弾劾訴追決議案が可決されると、上院で弾劾裁判が開かれる。トランプ氏を「有罪」とし罷免するには、3分の2以上の賛成が必要で、共和党から少なくとも17人が賛成に回る必要がある。

上院共和党トップのマコネル院内総務は、下院の弾劾訴追決議案可決後に声明を発表し、上院の弾劾裁判開始は来週以降になるとした。

マコネル氏は声明で「上院での手続きが今週始まり、急いだとしても、トランプ大統領の退任までに評決は出せない」と述べた。

マコネル氏は、バイデン氏の大統領就任前に「公正な裁判」を終えることはできないとし「上院はこれまで、3回の大統領弾劾裁判を開いたが、それぞれ83日、37日、21日を要した」と指摘した。

一方、民主上院トップのシューマー院内総務は、トランプ氏が上院の裁判で「有罪」となれば、上院はトランプ氏の大統領選再出馬を禁じる決議案について採決を実施すると語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・1月20日、トランプは「自分の大統領就任式」に出る?
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ税収、3月は前年比11%増 米関税政策で先行

ワールド

豪野党党首、国防費GDP比3%への増額公約 5月3

ワールド

ロシアのロスアトム、震災でもミャンマー原子力発電所

ワールド

シンガポールのコアインフレ率、3月は21年6月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 9
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中