慰安婦訴訟、韓国国内にも判決と文在寅政権を批判する声も
文在寅政権の選択肢は狭まっている...... Kim Min-Hee/REUTERS
strong><1月8日、韓国ソウル中央地裁は、慰安婦問題をめぐって日本政府に、原告1人当たり1億ウォンの賠償金の支払いを命ずる判決を下し、韓国国内にも波紋を広げている......>
韓国ソウル中央地裁が2021年1月8日、旧日本軍の元慰安婦12人が日本政府を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、原告1人当たり1億ウォン(約950万円)の賠償金の支払いを命ずる判決を下した。
日本政府は、ある国家の裁判所が他の国家を訴訟当事者として裁判することはできないという国際慣例法「国際法上の主権免除の原則」を主張して裁判自体を認めておらず控訴をしないため、1審が韓国の確定判決となる見込みである。
注目されていた「国際法上の主権免除の原則」に対する判断
故裵春姫(ぺ・チュンヒ)氏ら12人の原告は、植民地時代に日本に強制連行されて慰安婦にされたとして2013年8月、慰謝料を求める民事調停を申し立てが、日本政府が訴訟関連書類の送達を拒絶し、調停が行われることはなかった。
16年1月、原告の要請を受けて正式裁判に移行したが、日本政府が送達を拒絶したため、ソウル中央地裁は訴訟関連書類を受け取ったと見なす「公示送達」の手続きを取った。
同地裁は判決で「資料、弁論の趣旨を総合すると被告の不法行為が認められる」「(原告は)精神的、肉体的苦痛に苦しんだとみられ、慰謝料は原告が請求した1億ウォン以上とみるのが妥当」と説明、さらに「1965年の韓日請求権協定や2015年の慰安婦合意に、この事件の損害賠償請求権が含まれるとは見なしがたく、請求権の消滅はないとみる」と付け加えた。
今回の判決では「国際法上の主権免除の原則」に対する判断が注目されていた。2004年、ナチスによる強制労働被害者がドイツ政府を相手取って起こした訴訟で、イタリアの最高裁は「重大犯罪は主権免除の例外」として賠償判決を下したが、国際司法裁判所(ICJ)は「ナチスの行為は国際法上の犯罪だが、主権免除は剥奪されない」として、ドイツ政府が主張した「主権免除の原則」を認めている。
徴用工裁判から日韓関係悪化
2018年、元朝鮮半島出身労働者が賠償金の支払いを求めたいわゆる徴用工裁判で、日本は1965年の日韓請求権協定違反だと遺憾を表明したが、韓国の裁判所は、個人請求権は消滅していないとして原告勝訴の判決を下した。
日韓請求権協定は相手国への請求権を放棄する協定であり、自国の政府や企業に対する個人請求権は国内問題である。
徴用工判決が下された当時、文在寅大統領は三権分立を盾に静観したが20年10月、日本企業が賠償に応じれば、韓国政府が全額を穴埋めするという案を提示した。
65年の日韓国交回復以来、最悪といわれる現在の日韓関係は徴用工判決に端を発する。徴用工判決の翌月18年11月、韓国政府が日韓慰安婦合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の解散を表明し、12月には韓国海軍のレーダー照射事件が起きた。
19年7月、日本政府が韓国向け輸出管理を強化すると、韓国政府はWTO提訴と日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を主張し、日本製品不買運動が広がった。
日本から部材を輸入するグローバル企業への影響はほぼないが、観光業や日本からの輸入品を販売する事業者などが多大な被害を受け、文在寅大統領の退陣を求める声が広がった。