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慰安婦訴訟、韓国国内にも判決と文在寅政権を批判する声も

2021年1月12日(火)17時30分
佐々木和義

窮地に追い込まれた文在寅政権

ソウル中央地裁が元慰安婦の主張を認める判決を下した6時間半後、韓国外交部は「裁判所の判断を尊重する」と発表したが、一方で「2015年12月の韓日政府間の慰安婦合意が両国政府の公式合意という点を想起する」とし、また「今回の判決が外交関係に及ぼす影響を綿密に検討し、韓日両国間の建設的かつ未来志向的な協力が継続するよう努力をする」と論評した。

文在寅大統領は日韓慰安婦合意を破棄すると主張してきた。一方、オバマ政権時に副大統領として慰安婦合意に関わったとされるバイデン氏が米大統領に就任する。

新型コロナウイルスの影響で中韓首脳会談は見通しが立たず、日韓関係改善を迫るバイデン米政権が誕生すると韓国は孤立する。

日本との対話が唯一の打開策で、文在寅大統領は東京五輪への協力を口実に日本通の閣僚や議員を日本に送り込み、また、東京大大学院で博士号を取得し、韓日議員連盟の会長を務めた腹心の姜昌一(カン・チャンイル)前国会議員を駐日大使に任命した。

日本政府の資産差し押さえの「実効性はない」

今回の判決は、韓国で進行している他の慰安婦関連訴訟にも影響を与えると見られるが、専門家は実効性がないとみる。

裁判は無効だと主張する日本政府が賠償金を支払うことはない。徴用工判決で韓国裁判所は日本企業の資産の差し押さえと売却手続きを進めるが、日本政府の韓国内資産は大使館や領事館などウィーン条約で差押えや強制執行が免除されている。

また日本国内の政府資産の差し押さえは、日本側の承認が必要だが、最高裁が元慰安婦の請求権を認めない判断を下している日本の司法当局が許諾する可能性はない。

日本政府が米国や中国など第三国に有する資産も当該国の協力や承認が必要で、「日韓葛藤」に巻き込まれたくない各国が応じる可能性はないだろう。

日韓の葛藤を助長する判決に、韓国内では「国家間の約束をひっくり返した」「(条約に反する判決で)国の品格が落ちる」など、判決と文在寅政権を批判する声が上がっている。

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