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対談:船橋洋一×國井修

【緊急事態宣言】コロナ対策を拒む日本人の「正解主義」という病

2021年1月8日(金)17時20分
澤田知洋(本誌編集部)

途上国を支援しないと東京五輪も危うい

<國井>ワクチンや治療薬開発にもグローバルな協力が必要だ。日本国内で数が少ない治験をやるより、患者の多いインドやブラジルなどとの共同開発も視野に入れるべきだ。ただし、コロナ禍では海外に人工呼吸器を輸出しないなどの自国優先主義も目立ったので、ワクチン・治療薬の開発・確保に限らず、マスクなどの国内での有事の時の備蓄・製造は必要だ。

<船橋>ファイザーやモデルナなど大手製薬メーカーが世界にワクチンを供与しているなか、この流れから日本企業が一歩も二歩もずり落ちているのは残念だ。厚労省単独で出来ないのなら、政治主導で国策民営会社を作ることを含めて、世界を見据えてワクチン開発の出直しを図るべきだ。

<國井>まさに。民間企業や大学・研究所など、今回は国際的に見た日本の実力が露呈した。世界の状況を考えると国際協力は非常に重要だ。アジアや中南米、アフリカでは今でも感染が広がっている。グローバルファンドを含めて国際機関が検査や治療、ワクチンを広げようとしているが、なかなか資金が集まらない。中低所得国が今後1年くらいで新型コロナ対策に必要としている資金が大体4兆円ぐらい。そのうちの4000億円も集まっていない。

ところが先進国は自国のコロナ対応に1000兆円以上、日本だけでも200兆円以上を出している。そのわずか500分の1程度でいいので、国際協力に回してもらえないだろうか。それが今回、私が日本に来た目的のひとつだ。資金不足のために検査も隔離もできない国がまだ多い。先進国で感染が収束しても、他の国々で感染が拡大し、その状況も把握できないなかで五輪を開けるのだろうか、心配だ。感染症に国境はなく、自国だけを見ていてはパンデミックを終息できない。国際協力の重要性を繰り返し強調したい。

「正解主義」の克服

<國井>現代には答えのない課題があまりに多い。正解を覚えるインプット中心の教育で、意見をはっきり言えず、批判はしても議論を闘わせることができない日本人には難しい時代だ。グローバルで活躍できる日本人は本当に少ない。人材をいかに創出するか、真剣に考えるべきだ。特に未来を創る上で重要な官公庁で、産学官民を行ったり来たりできる「回転ドア」のような流動的な人材配置・登用が必要だ。私も病院や大学、外務省などとさまざまな職場を渡り歩いたが、得られた経験と知識と人脈は足し算でなくて掛け算。相乗効果がある。

日本に期待するのはアジリティ(機敏性)だ。世界や時代のスピードについていってない。海外から見ていて危機感すら感じる。正解のない課題への取り組みは果敢に、ロジックと「観」と「感」と「勘」で取り組み、失敗を恐れず前に進み、不具合はそのたびに修正しながら進化させるべきだ。コロナは日本にいろいろなことを教えてくれた。広い視野で未来を見つめて日本を見つめ直すチャンスだ。

<船橋>正解を求めすぎてはやっていけない時代で、まずは仮説から出していくことでしか前に進めないと思う。日本は国際会議でも各国の発言が一巡して最後に一言、というふうに、「相場」を見て解を出そうとする。手持ちの材料が十分ではないなかでも工夫してなにができるか、というところからはじめなければいけない。「正解主義」を克服しないことには、世界と付き合えないし、危機にも対応できず、新しい未来も作りにくいだろう。

※対談前編はこちら:【船橋洋一×國井修】日本のコロナ対策に足りない3つの要素

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