韓国では自治体もサポート パリ五輪から正式採用でブレイクダンスに注目
自治体が世界大会を開催
ブレイクダンスがここまで人気となった背景として、韓国の自治体のサポートも忘れてはいけない。2007年からおととしまで毎年行われていたブレイクダンスの世界大会「R16Korea 」は、韓国観光公社と議政府市が主催し、韓国文化体育観光省が後援を行う政府公認的なブレイクダンス大会だった。
また富川市は、2012年より「ブレイクダンスのメッカ都市」と名乗り、ブレイクダンスイベントを開催してきた。2014年には全国大会を行い、2016年からは世界からブレイクダンスチームをゲストに招き、「BBIC」というブレイクダンス国際大会を大々的に開催している。
さらに、蔚山市では昨年10月から2年間ブレイクダンスチーム「カイクルー」を市の広報大使に任命した。今後は、市公認のイベントや、公式ユーチューブチャンネルに出演し活動していくという。
カイクルーは1999年から活動している15人組のブレイクダンスグループで、世界大会にも何度も出場している有名なチームの1つである。今回のパリ・オリンピックに選手として出場することにももちろん意欲的だという。
聴覚障がいありながらユース五輪でメダル獲得
ほかにもオリンピック出場に期待を寄せる選手がいる。キム・イェリ選手は聴覚障がい者でありながら、2018年ブエノスアイレス・ユース・オリンピックに出場し銅メダルを受賞したダンサーである。
キム・イェリ選手は、聴覚障がいがあることが原因で、もともといじめられっ子だったという。ところが、中学校1年生の時、学校で特技自慢大会があり在校生の前でダンスを踊ったことでいじめっ子たちからの視線が変わったそうだ。彼女は「ダンスがいじめを終わらせる突破口となった」と語っている。
耳に超小型補聴器を付けて踊っているが、ときには音が聞こえないこともあるそうで、そういうときは、相手チームが踊っているダンサーのリズムを目で見て、心の中で1.2.1.2.と音を刻み踊るのだという。聴覚障がいは、ダンサーにとってかなり不利な短所と言える。しかし、彼女はなぜそこまでしてダンスを続け、世界大会でも入賞できる強さを持っているのか。
キム・イェリ選手は、あるTVのインタビューで「女性はブレイクダンスが下手だ。聴覚障がい者には踊れない──そんな偏見に打ち勝ち、人の目を気にせずやりたい事をやるという道を私が拓きたい」と力強く語っていた。この使命感が彼女を後押ししているのかもしれない。
3年後のパリ・オリンピックでは、これまで「ブレイクダンス」を見たことなかった人も、ぜひ競技に注目して欲しい。そして、ここで紹介した韓国の選手の他に、日本や世界の素晴らしい選手たちの活躍に期待したい。
時代と共に様々なスポーツが入れ替わっている。それまであった競技が除外されることは少し寂しいが、それによって新しいスポーツに目を向けてみる良いきっかけになるかもしれない。