最新記事

慰安婦問題

韓国裁判所、日本政府に慰安婦被害者へ各950万円の賠償を命令 日韓関係さらなる悪化か

2021年1月8日(金)12時11分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

写真はソウル市内に設置された慰安婦像。2015年12月撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji)

旧日本軍の元慰安婦12人が日本政府を相手取り損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は8日、原告ひとり当たり1億ウォン(約950万円)の賠償を命ずる判決を下した。

韓国メディアが報じたところによると、原告のペ・チュンヒ氏(故人)らは2013年8月、日本統治下時代に「日本政府にだまされたり連行されたりして慰安婦にされた」として、日本政府にひとり当たり1億ウォンの慰謝料を求める民事調停を申し立てた。しかし、日本政府は訴訟関連書類の送達を拒否し、調停が成立せず、原告の要請により、裁判所は16年1月、正式訴訟に移行した。

日本政府側は、裁判所が他国を訴訟の当事者として裁判を行うことはできないとする国際法上の原則「主権免除」を主張し、訴訟の却下を求めてきた。

これについてソウル中央地裁は「この事件の不法行為は計画的、組織的に行われた反人道的行為であり、国際規範を違反した」「主権免除論など、国家免除はこのような場合まで適用されない」とした。

さらに裁判所は「各種資料と事実、弁論などを総合すれば、(日本側の)不法行為が認められる」とし、「想像できない深刻な精神的肉体的苦痛に原告が苦しみ、国際的な謝罪も受けなかった」「慰謝料は、原告が請求した1億ウォン以上とみて妥当である。 原告請求をすべて認める」とした。

日本政府を相手にした元慰安婦による訴訟について韓国の裁判所の判決が出てきたのは今回が初めて。

日韓関係、さらなる悪化も

日韓関係は、2018年10月、韓国の大法院が日本製鉄に対し、旧朝鮮半島出身労働者への賠償金支払いを命じた徴用工裁判以降、急速に悪化しているが、文在寅大統領は、「司法の決定について介入するのは不適切」として事態を収拾する動きをみせず、今回の元慰安婦による訴訟についても同様の対応を取ることが予想される。

また、13日には別の元慰安婦たちが日本政府を相手に起こした損害賠償請求訴訟の1審の判決が予定されており、同様の判決が下されれば、日韓関係はさらなる悪化は避けられないとみられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中