最新記事

韓国

韓国・朴槿恵前大統領、懲役20年実刑確定で、李明博元大統領と共に恩赦が焦点に

2021年1月18日(月)14時39分
佐々木和義

懲役20年の実刑が確定した朴槿恵前大統 REUTERS/Kim Hong-Ji

<朴槿恵前大統領に対する懲役20年と罰金の確定判決を下したが、李明博元大統領ともに「特別赦免」が、今後の焦点となっている......>

2021年1月14日、韓国最高裁が朴槿恵前大統領に対する懲役20年と罰金の確定判決を下したが、いっぽう恩赦にあたる「特別赦免」が焦点として浮上している。

韓国与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、李明博元大統領と朴槿恵前大統領の特別赦免を提起していた。

特別赦免は三権分立に符合しないという議論があるが、閣議審議だけで決定できる大統領固有の権限で、大統領の就任時や日本からの独立を記念する光復節など、事あるごとに行われている。

党代表の発言に与党議員は反発、野党は概ね前向きに評価するが、政治戦略に長けた李洛淵代表の真意に疑念を抱く声もある。

韓国民主化以降、歴代大統領は、皆、退任後に捜査を受ける

韓国政界屈指の知日派として知られる李洛淵与党代表は、2021年1月1日、新年政局構想計画で「適切な時期に2人の前職大統領の赦免を文在寅大統領に建議する」と明らかにした。文大統領支持層と大統領の退陣を要求する保守層の対立が続くなか、「(2人の前職大統領の赦免が)国民統合の大きなカギになる可能性がある」と理由づけた。

特別赦免は、政権政党が変わると前任大統領が捜査を受ける"政治報復"の輪を断ち切る手段として活用されてきた。

1987年の韓国民主化宣言以降の歴代大統領は、皆、退任後に捜査を受けている。全斗煥元大統領は死刑判決を受け、盧泰愚元大統領は懲役判決を受けて服役した。金泳三元大統領は次男が、金大中元大統領は3人の息子が逮捕され、盧武鉉元大統領は捜査の手が伸びると自殺した。

李明博元大統領は、文政権の支持率が安定していた18年4月に収賄などの容疑で起訴され、同年10月5日、ソウル中央地方裁判所から懲役15年と罰金130億ウォンの有罪判決を言い渡された。20年2月、高裁から一審より重い懲役17年、罰金130億ウォンと追徴金約57億8000万ウォンの支払いを命じる控訴審判決が下され、同10月29日、最高裁が上告を棄却して実刑が確定した。

朴前大統領は知人の崔順実氏と共謀してサムスングループなどから多額の賄賂を受け取り、また、情報機関・国家情報院から巨額の裏金を受け取ったとされ、収賄罪や職権乱用罪で問われていた。

20年7月10日、ソウル高裁が懲役20年と罰金180億ウォン(約16億円)、35億ウォンの追徴金を命じる判決を下し、検察が上告したが、1月14日、最高裁が上告を棄却する判決を下して刑が確定、特別赦免の要件が整った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 8
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中