アメリカが衰退する世界に「チャイナ・ファースト」が忍び寄る
CHINA WON 2020
中国は日常を取り戻しつつある(10月1日、北京駅前) Carlos Garcia Rawlins-REUTERS
<世界は間もなく「アメリカ・ファースト」に別れを告げることができるが、それが「チャイナ・ファースト」に代わるだけなら元も子もない>
未来の歴史の本で、2020年は新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行した年として記録されるだろう。と同時に、ドナルド・トランプ米大統領の下劣な時代に終止符が打たれた年としても記憶されるだろう。どちらもアメリカ優位の時代から、中国優位の時代へのシフトを決定づけたエピソードとして、世界の歴史に永遠に記憶されるに違いない。
実際、2020年は中国にとって大成功の年だった。もちろん最初は違った。局地的なアウトブレイク(爆発的拡大)はたちまちパンデミック(世界的大流行)へと発展し、世界経済に急ブレーキがかかった。貿易戦争の次にやって来た疫病で、国内でも政府への信頼は失墜。さらに習近平(シー・チンピン)国家主席が、香港国家安全維持法を成立させて、「一国二制度」をお払い箱にし、香港の民主化運動を力ずくで抑え込むと、欧米諸国の中国に対する不信感は決定的に悪化した。
ところが今、中国の立場は大幅に改善したように見える。中国指導部は、一党独裁体制ならではの過激な措置でコロナ禍を封じ込め、経済成長を元の軌道に戻し、コロナ前の日常をほぼ完全に取り戻した。
さらに中国は、アメリカとの貿易戦争にほとんど譲歩しなかっただけでなく、グローバルな勢力図においてクーデターに似たことを成し遂げた。11月に東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名して、世界最大の自由貿易圏の中心に躍り出たのだ。
TPPから離脱したアメリカ
それは現実(リアリティー)とリアリティー番組の違いを見せつける出来事だった。というのも、トランプ政権は発足早々の17年1月、RCEPとよく似た地域をカバーするTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱を発表して、アメリカを中心とする巨大自由貿易圏を構築するチャンスを自らフイにしたからだ。
これは中国にとって究極の「棚ぼた」だった。RCEPの発足により、今後中国を中心とする相互依存のネットワークが強化され、新しい地政学的な現実が生まれるだろう。
このように、中国が年初のピンチをはね返し、強大化して年末を迎えようとする一方で、アメリカは猛烈なコロナ禍と、大統領選後の大混乱(どちらもトランプに大きな責任がある)のために衰えている。果たして、ジョー・バイデン次期大統領は、この下方スパイラルからアメリカを救い出せるのか。現時点では、選挙によって一段と分断された国内が、再びお互いに共通点と信頼を見いだして一致できる気配はない。