最新記事

経済予測

米中逆転は5年早まり2028年──コロナ対応の巧拙で明暗。日本は3位を維持

China Will Overtake U.S. as Top Global Economy by 2028 Thanks to Superior COVID Response: Report

2020年12月28日(月)16時38分
デービッド・ブレナン

中国で行われた世界インターネット大会の開会式にスクリーンで登場した習近平(2019年10月)Aly Song-REUTERS

<新型コロナウイルス封じ込めの成功で、中国経済は予想より5年早くアメリカを追い抜く、と英シンクタンクが予想>

中国は2028年までにアメリカを抜いて世界最大の経済大国になる、とイギリスの調査機関が発表した。西側諸国が新型コロナウイルスの感染拡大に今も手を焼いているのに対し、迅速に対応してウイルスの封じ込めに成功した中国はいち早く経済成長を軌道に乗せているからだ。

英シンクタンクの「経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)」は12月26日、年次報告書を発表し、パンデミック(世界的大流行)が各国の経済に悪影響を与えたため、中国が当初予測よりも5年早くアメリカを抜くことになると予測した。

「かねてから、アメリカと中国の経済とソフトパワーの争いが世界経済全体に影響する重要な問題となっていた」と、CEBRは指摘した。「新型コロナウイルスのパンデミックとそれに伴う経済の落ち込みで、この競争が中国に有利に働いていることは確かだ」

パンデミックは昨年末に中国の武漢市で始まり、世界に広がった。中国は感染拡大を防ぐため、すぐに武漢を76日に渡って封鎖するなど厳しい規制を導入した。

中国の独裁的な体制によって可能になった厳しい措置は、感染拡大の阻止に貢献したようだ。ジョンズ・ホプキンス大学によると、中国政府は、国内の新型コロナの感染者数を9万5460人、死者を4770人と報告している。だが他の国の状況は、はるかに悪い。全世界で8000万人近くの感染と、170万人以上の死亡が確認されている。

中国はすでに元通り

アメリカはパンデミックの震源地となっており、今も感染者が急増し続けている。これまで1870万人以上の感染が確認され、33万人が死亡した。ロックダウンと治安の悪化によってアメリカ経済は痛手を被っており、失業率は急上昇した。一方中国では、国民の生活はほとんど正常に戻っている。

CEBRによると、2021年から25年にかけて中国経済の平均成長率は年5.7%で推移し、その後26年から30年にかけての成長率は4.5%程度に鈍化する見込み。中国の巧みなパンデミック抑制策がこうした成長の重要な原動力になっているという。

米経済は21年にパンデミック後の力強い景気回復を示す可能性が高いが、22年から24年の経済成長は毎年1.9%程度に減速するという。その後、成長率はさらに鈍化し、1.6%になる見込みだ。

報告書は、米中以外の国についても興味深い予想をしている。日本は世界第3位の経済規模を維持するが、2030年代初頭にインドに追い越される。同時に、ドイツが4位から5位に後退する。一方、イギリスは欧州連合(EU)から離脱した後、24年までに5位から6位に転落する。

CEBRは全体として、パンデミックは経済成長の鈍化ではなく、高いインフレを引き起す可能性が高いと指摘する。「2020年代半ばに金利が上昇する経済サイクル」に入り、それがパンデミックで混乱した経済を支えるために巨額の資金を借り入れた政府の財政の足を引っ張る、と報告書は予測する。「だが2030年代に入ると、環境に優しくテクノロジーを原動力とした経済に向かうこれまでのトレンドが一層際立つことになる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中