ツインデミックは杞憂? 冬を迎えた欧州、コロナ第2波でインフル激減の可能性
欧州が新型コロナウイルス感染の急増リスクのある冬に備えている中で、今のところインフルエンザの確認感染数が最小限にとどまっている。独ベルリンの病院で10月撮影(2020年 ロイター/Fabrizio Bensch)
欧州が新型コロナウイルス感染の急増リスクのある冬に備えている中で、今のところインフルエンザの確認感染数が最小限にとどまっている。これは欧州の人々にとって一筋の光明かもしれない。
10月初めごろ以降は例年ならインフル感染が増え始める時期だが、今年の場合、欧州地域で得られるそうしたデータは、今年の南半球や、インフルの季節が始まったばかりの米国のデータとも動きが一致している。
インフルの流行抑制について、一部の医師はロックダウン(封鎖)やマスク着用、手洗いなどの組み合わせが影響しているように見えると指摘。ただし、インフルの季節のピークはまだ数週間後、あるいは数か月後になるため、現在のデータは慎重に見るべきだとも警告する。
WHO基準大きく下回る陽性率
欧州疾病予防管理センター(ECDC)と世界保健機関(WHO)が共同運営する感染症監視機関「フルー・ニューズ・ヨーロッパ」によると、欧州域内54地域からサンプルを集めた結果、9月28日-11月22日のインフル定点検査4433件中、陽性と診断されたのは1件だけだった。
この定点検査データは、さまざまな地域医療機関が集めたサンプルに基づいて欧州各国の保健当局が照合したものだ。それによると陽性率はわずか0.02%だった。WHOがインフルの大流行の基準と見なす10%をはるかに下回る。昨年の同じ時期の調査では陽性率は15%だった。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、米国内の公的医療研究機関などの報告では9月27日以来、インフル感染数は500件を下回っており、死亡例は1件もない。
専門家は新型コロナ禍でインフル検査が滞っていることもあると慎重な構えだ。一方で、欧州の定点検査が示した、これまでのところのインフル感染の少なさは、政府や保健当局をやや安堵させるだろう。冬に新型コロナとインフルの流行が重なって医療を崩壊させる事態が恐れられていたからだ。
フランスのリヨンで13の病院を経営する医療機関のウイルス学者、ブルーノ・リナ氏はロイターに「例年なら欧州でもそれ以外の地域でも、この時期は何百人ものインフル感染が確認されているはずだ」と話した。「新型コロナ感染を防ぐために取られた措置が、インフルやほかの呼吸器系ウイルスに対して極めて有効だということだ」という。
リナ氏や他の専門家2人は「ウイルス干渉」効果の可能性も指摘する。あるウイルスにさらされることで引き起こされる免疫反応が、他のウイルスにとって致命的になるというメカニズムだ。今は新型コロナがまん延しているため、インフルのような他の呼吸器系ウイルスにとって新型コロナとの共存が、まったく不可能ではないにしても、極めて難しくなっている可能性があるという。