ツインデミックは杞憂? 冬を迎えた欧州、コロナ第2波でインフル激減の可能性
欧州では例年、季節性インフルに最大約5000万人が罹患し、インフル関連の死者は年最大7万人。特に高齢者や高リスク集団がインフル死者の中心だ。
欧州の新型コロナ死者数は今年これまでに37万人を超えている。
インフルワクチン生産にも影響
複数の専門家は、新型コロナ流行の抑制に何らかの成功があれば、逆にインフル流行を押さえ込んでいるウイルス干渉がそれによって弱まる可能性があるとも警告する。インフルのピークは北半球では通常、年明けの最初の数週間ごろに来る。今年の場合、欧州でのピークは2月だった。
クリスマスや新年には新型コロナの制限措置を緩和し祭事の集まりを容認しようとしている政府は多く、保健当局はこれが感染症流行への対応を困難にするとも警戒している。
もう一つの不確定要因はインフルワクチンの接種率の行方だ。専門家によると、多くの政府が今年はできるだけ早くインフルワクチンの接種を受けるよう市民に要請しているにもかかわらず、欧州各地での接種状況はばらつきが大きい。
英ウォーリック大学のエドワード・ヒル主任研究員によると、今年はこれまでのところインフルの感染が少ないため、まだインフルのワクチン接種を受けていない人が接種を渋る可能性がある。
インフル感染者が少ないと、ワクチンメーカーが2021-22年のインフルシーズンに向けてワクチン生産準備をする上でも問題になる恐れがある。WHOは毎年2月、北半球の次の冬季向けに想定されるワクチン生産でメーカーが使うべきウイルス株を推奨する。
英グラクソスミスクライン、フランスのサノフィ、米アボット、英セキーラスなど大手は今年、需要拡大を見込んで欧州向けのインフルワクチン供給を平均で30%増やしている。しかし、域内の一部の国では供給が目標に届いていない。
欧州製薬団体連合会(EFPIA)のインフル作業部会の専門家、マシュー・ダウンハム氏は「現状でインフル流行が世界的に信じられないくらい少ないことを考えると、WHOが株の選定を決定するのに例年頼っている何千ものインフル陽性サンプルが入手できないかもしれない」と述べた。「WHOは1種類ないしそれ以上の株を推奨するのを来年3月までぎりぎり先延ばししないといけないかもしれない。これは次には、ワクチンメーカーの負担が増えることにもつながる」という。
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