アメリカ中西部にコロナ感染の大波 医療現場は崩壊の危機
僻地の病院は患者が最も少ない時期ですらスタッフが不足している。患者が増えると期間限定で働く「トラベルナース」を採用するが、今では確保が難しくなっている。
ノースダコタ州のコモンスピリット・ヘルスの看護師長、マリー・ヘランド氏は11カ所のクリティカルアクセス病院向けにトラベルナースを採用しようとしたが、全て大病院に持って行かれてしまったという。
ハッチンソン地域医療センターの看護部門の責任者、アマンダ・フレット氏は事務作業に退いて長いが、現場でシフトに入り始めた。常に肉体的、精神的に疲れ、患者が近しい友人や同僚だといっそうつらい思いをするという。
同センターの看護師ヘーゼル氏は、元ボーリング仲間を患者として世話することになった。「優しくて、いつも座っておしゃべりしていた」彼は今、人工呼吸器につながれている。「1、2週間中に厳しい決断をすることになるでしょう」とヘーゼル氏は言う。
医療従事者は限界
医療従事者によると、新型コロナを軽視する態度が当局者やコミュニティー、患者の間ですら広がっており、いら立ちを感じるという。
ウィスコンシン州のSSMヘルスのアリソン・シュワルツ医師によると、患者の1人は新型コロナの症状が悪化しても恐ろしい病気だと絶対に認めなかった。この患者が亡くなったときに家族は、新型コロナが原因だということを受け入れるのを拒んだ。新型コロナで死亡することはないと信じていたためだという。
中西部では一部の州や地方自治体がマスクの着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の義務付けに消極的だ。
ネブラスカ州のピート・リケッツ知事(共和党)は地方自治体によるマスク着用の義務化を認めないとまで述べた。知事は13日の記者会見で「マスクには効果があるが、ひとつの手段にすぎない」と述べ、人と距離を取ったり大規模な集会を避けたりといった対策にも目を向けるよう促した。
サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事はマスク着用の義務化を拒否し、公衆の場での集会や事業活動への制限も課していない。こうした事柄は「個人の責任」によるという立場だ。
医師らは、こうした行動を変えようとしても無力感に襲われると話す。SSMヘルスのシュワルツ医師は「誰もが人生を歩み続けている」が、「われわれの方は溺れかけているような感じだ」と話した。
(Nick Brown記者)
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