最新記事

医療

アメリカ中西部にコロナ感染の大波 医療現場は崩壊の危機

2020年11月30日(月)11時38分

医療従事者によると、保守的な州や郡では、新型コロナの感染者が急増する中、患者や地元の有力者に新型コロナを真剣に受け止めるよう説得するのは決して容易ではない。民主党がでっち上げた流行ではないと分かってもらうことだけでも困難に直面することが少なくないという。

新型コロナ流行のねつ造説は、政権のトップが発信源だ。トランプ氏は大統領選の際、中西部などで人が密集する集会を開き、マスクを着用するかどうかは個人の判断だとした。トランプ氏は選挙に負けたが、任期があと2カ月残っており、危機が悪化しているのに自分の新型コロナ戦略を見直す兆しは見られない。

これについてホワイトハウスの報道対応室はコメント要請に答えなかったが、医療当局者や病院のスタッフの間からは、感染状況を見るとこうした自由放任の政策は受け入れがたいとの声が出ている。

ネブラスカ大医療センターのケリー・コーカット医師は「コミュニティーに分断が起きている。バーやレストランに出掛けたり、感謝祭のディナーを計画したりしている人がいる」と述べた。医療従事者は「落胆を味わっている」と言う。

米国の新型コロナによる死者数は25万6000人余りに達した。ただ、研究が進んで致死率は下がっており、モデルナやファイザーなどのワクチンが来年初めには供給されそうだ。一方、当面のところ、小規模な病院は「レムデシビル」など治療薬については大病院と同じ対応が取れるが、ICUの機器や専門スタッフの確保は大病院に遅れている。

気温が下がり室内で過ごす時間が増え、休暇中の旅行は続いており、中西部の医師は事態がすぐに良くなることはないと見ている。ミラー医師は「最悪期はこれからだ」と話した。

問題はベッドではなくスタッフの不足

病院の幹部によると、スタッフは超過勤務や悲しみ、死などに見舞われ、士気が低下している。多くの病院にとって最大の問題はベッドではなくスタッフの不足だという。サウスダコタ州アベラヘスルのアンソニー・ヘリックス医師は「折りたたみ式ベッドを用意することはできるが、だからといって適切な看護スタッフがそろうわけではない」と述べた。

カンザス州のハッチンソン地域医療センターの看護師、メリッサ・ヘーゼル氏によると、新型コロナ患者は症状が急激に悪化することがあるため、他の患者よりも注意深く見守る必要がある。ヘーゼル氏自身も新型コロナに感染し、ウイルスを拡散しなくなったことが確認されてすぐに職場に復帰した。

「精神的、肉体的に仕事に復帰できる状態だったと思いますか。いいえ。でもチームメートのことを考えると復帰する必要があった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中