アメリカ中西部にコロナ感染の大波 医療現場は崩壊の危機
医療従事者によると、保守的な州や郡では、新型コロナの感染者が急増する中、患者や地元の有力者に新型コロナを真剣に受け止めるよう説得するのは決して容易ではない。民主党がでっち上げた流行ではないと分かってもらうことだけでも困難に直面することが少なくないという。
新型コロナ流行のねつ造説は、政権のトップが発信源だ。トランプ氏は大統領選の際、中西部などで人が密集する集会を開き、マスクを着用するかどうかは個人の判断だとした。トランプ氏は選挙に負けたが、任期があと2カ月残っており、危機が悪化しているのに自分の新型コロナ戦略を見直す兆しは見られない。
これについてホワイトハウスの報道対応室はコメント要請に答えなかったが、医療当局者や病院のスタッフの間からは、感染状況を見るとこうした自由放任の政策は受け入れがたいとの声が出ている。
ネブラスカ大医療センターのケリー・コーカット医師は「コミュニティーに分断が起きている。バーやレストランに出掛けたり、感謝祭のディナーを計画したりしている人がいる」と述べた。医療従事者は「落胆を味わっている」と言う。
米国の新型コロナによる死者数は25万6000人余りに達した。ただ、研究が進んで致死率は下がっており、モデルナやファイザーなどのワクチンが来年初めには供給されそうだ。一方、当面のところ、小規模な病院は「レムデシビル」など治療薬については大病院と同じ対応が取れるが、ICUの機器や専門スタッフの確保は大病院に遅れている。
気温が下がり室内で過ごす時間が増え、休暇中の旅行は続いており、中西部の医師は事態がすぐに良くなることはないと見ている。ミラー医師は「最悪期はこれからだ」と話した。
問題はベッドではなくスタッフの不足
病院の幹部によると、スタッフは超過勤務や悲しみ、死などに見舞われ、士気が低下している。多くの病院にとって最大の問題はベッドではなくスタッフの不足だという。サウスダコタ州アベラヘスルのアンソニー・ヘリックス医師は「折りたたみ式ベッドを用意することはできるが、だからといって適切な看護スタッフがそろうわけではない」と述べた。
カンザス州のハッチンソン地域医療センターの看護師、メリッサ・ヘーゼル氏によると、新型コロナ患者は症状が急激に悪化することがあるため、他の患者よりも注意深く見守る必要がある。ヘーゼル氏自身も新型コロナに感染し、ウイルスを拡散しなくなったことが確認されてすぐに職場に復帰した。
「精神的、肉体的に仕事に復帰できる状態だったと思いますか。いいえ。でもチームメートのことを考えると復帰する必要があった」