新型コロナワクチン、開発競争の裏でもう一つの課題 極低温輸送の準備急ぐ航空各社

航空各社がこのところ忙殺されているのが、極低温輸送・保管施設の準備である。写真はベルギーのプールスにあるファイザーの研究施設で、新型コロナウイルス向けワクチン試薬が保管された冷凍庫の前を移動する関係者。ファイザー提供(2020年 ロイター)
航空各社がこのところ忙殺されているのが、極低温輸送・保管施設の準備である。運ぶものはファイザーとモデルナが開発するCOVID-19ワクチンだ。最初に流通する可能性が高い両社のワクチンだが、いずれも極低温での輸送・保管が必要となる。
航空貨物関連の業界団体、医薬品輸送企業の団体に対する最近の調査では、この業界に参入している企業のうち、ファイザー製ワクチンが必要とする摂氏マイナス70度(華氏マイナス94度)近い低温での輸送に対応できるとの感触を得ているのはわずか15%だ。モデルナのワクチンが必要とする条件はマイナス20度とやや緩く、約60%の企業が対応できるとしている。
通常、航空会社が医薬品を輸送する場合、ドライアイスなどの冷却剤を投入したコンテナを利用するが、温度調整ができないものもあり、製品が運航の遅延など予期せぬ出来事の影響を受けやすい。
航空各社は現在、極低温を必要とするワクチンの輸送に向けて、小型車ほどのコストがかかる大型の電気冷蔵設備から、液体窒素を用いる多層構造の冷蔵容器に至るまで、さまざまな選択肢を検討している。
こうした高度な梱包技術に対する潜在的需要が見込まれるため、クライオポートや独バキューテックなど冷蔵コンテナ専門企業の株価は、ここ数カ月で2倍以上に上昇している。
大韓航空<003490.KS>の広報担当者は「大韓航空では、温度管理コンテナのメーカー5社と直接契約し、十分な量のコンテナを確保している。現在、それ以外のコンテナメーカーとも契約締結のプロセスに入っている」と話している。
エールフランスKLMでは、製薬会社1社とのワクチン輸送実地試験を急いでいるという。相手企業名については明らかにしなかったが、恐らくアムステルダムのスキポール空港経由で、ダミーのサンプルを極低温で輸送することになる。
エールフランスKLMの特殊貨物担当マネジャーを務めるベアトリス・デルプエク氏がロイターに語ったところでは、この実地試験では、1個当たり最大5000回投与分を収容するボックスを使い、全てドライアイスによって冷却するという。その後の輸送では、バキューテックから貸与されるもっと大型の極低温コンテナを使う可能性がある。
デルプエク氏は「航空輸送のセグメントも含め、始点から終点までロジスティクス全体を検証する必要がある」と語る。「私たちのチーム全体と、プロセスのステップを逐一検証する専門タスクフォースを用意して、どこにも何の障害も残らないようにしている」と話す。