多様性と平等を重視するはずの国連高官は白人ばかり
THE U.N.’S DIVERSITY PROBLEM
元ポルトガル首相のグテレスは、西欧人として(代行職を除けば)4人目の国連事務総長だ。彼はこの演説で「アフリカは二重の意味で犠牲者だ」とも指摘した。「まず、植民地支配の犠牲となった。そして第2に、あの大戦を経てアフリカの人たちが独立を果たす以前に設立された国際機関においても、正当に代表されているとは言えない」
だがグテレス自身も人種問題でつまずいた。世界各地で人種差別に対する抗議デモが盛んになった今年6月、国連の人事部門は国際公務員の倫理規定を盾に、抗議デモへの参加を控えるよう職員に指示した。特定の加盟国における社会情勢には中立を守るべし、というわけだ。
外交筋によると、グテレスも当初は人事部門のこの見解を支持していたが、批判を浴びたので翻意し、職員が個人としてデモに参加するのは自由だと表明した。実際、アフリカ系アメリカ人の国連高官として最も有名でノーベル平和賞も受賞したラルフ・バンチ(故人)も、かつて公民権運動たけなわの時期に、アラバマ州セルマで故キング牧師と並んで行進していたのだ。
その後、グテレスはオンラインの職員集会で改めてこう釈明した。国連は「人種差別に直面した職員に中立的な立場を取るよう強いたりはしない。個人として連帯の意思を表明し、あるいは平和的な抗議行動に参加することは禁じない」と。
8月には、国連職員を対象とした人種問題に関する調査が中止に追い込まれた。回答者に肌の色を尋ね、その選択肢に黄色(イエロー)が含まれていたからだ。イエローは歴史的にアジア系の人々に対する差別的表現と受け止められるため、撤回を求められることになった。
アメリカで黒人男性ジョージ・フロイドが警官に殺され、その後に激しい抗議行動が起きたことを受け、国連の職員団体は6月に、アフリカ系職員を対象として人種差別に関する調査を行った。回答を寄せたのは2000人超。筆者が入手したその調査報告によると、職員の約52%が何らかの形で人種差別の経験ありと回答していた。
「あらゆる分野に差別がある。職種や昇進、研修にも」と、ある匿名の回答者は述べていた。「本部の仕事にアフリカ人が採用されることはまれ」だという回答もあった。上級職に就くのは圧倒的に欧米諸国の出身者で、「アフリカ人の自分は危険な勤務地に張り付けられている」という訴えもあった。
多様化は絵に描いた餅
国連憲章で、職員の採用は実力主義に基づくが「可能な限り地理的に広く採用する重要性に配慮する」と定められている。だが職員の間には、グテレス体制下のOCHAで途上国出身者の活躍の場を増やすための努力があまりにも少ないという不満もある。
OCHAの広報担当は、多様化の努力がもっと必要だと認めつつ、2017年にローコックが国連事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官に着任してからは改善が見られると語った。「OCHAでは多様化推進の決意を実行に移している」