多様性と平等を重視するはずの国連高官は白人ばかり
THE U.N.’S DIVERSITY PROBLEM
もっとひどいのはニューヨークにある国連本部で、職員の71%は欧米人。政策立案やコミュニケーション戦略などの主要部門に限れば、少なくとも90%が欧米系だ。
こうした不公平には職員の間から怒りの声が上がっている。とりわけ批判されているのは、2017年9月にOCHAトップに就任したマーク・ローコック。エコノミストで、英国際開発省の元事務次官だ。
「OCHAは人種差別と新植民地主義の問題を抱えている。その問題は上層部から始まっている」。職員の1人は今年3月、国連の内部監察機関に、そう申し立てている。「ローコックは権力と影響力を持つ組織内の要職を、常に白人やイギリス人に引き継がせている」
告発状には、「OCHAのウェブサイトで幹部職員の紹介ページを開くと、目に飛び込んでくるのは(ほぼ)白人ばかりで、国際的な援助活動にも白人の視点がずっと取り入れられてきたことに気付かされる。掲載されている写真の15枚中12枚が白人だ」とある。「有色人種の写真は3枚だけであり、黒人に至っては皆無だ」とも。
実際、OCHAで指導的な地位にある職員の顔触れを見ると、1人を除いて全員が欧米の出身者だ。
第2次大戦後に国連を創設するに当たり、イギリスが要となる役割を果たしたのは事実。だからこそアメリカやフランス、ロシア、中国と並んで国連安保理の常任理事国になれた。そして今も、この5カ国が国連の重要ポストを握っている。
例えば、経済社会部門のトップを務めるのは10年以上前から中国の外交官で、彼は自分の立場を利用して中国の「一帯一路」構想を推進している。フランスの政府高官は20年以上にわたって平和構築部門を率いており、アフリカや中東など、フランスが今なお外交的な影響力を手放したくない地域のミッションを統括している。2007年3月から政治部門のトップを務めているのは米国務省の出身者だ。そしてロシアも、2017年に新設されたテロ対策部門のトップに自国の高官を送り込んでいる。
アメリカの元外交官で政治担当の国連事務次長を務めたジェフリー・フェルトマンは筆者に、自分がワシントン時代の部下を国連に連れて行くのは「不適切」だと思ったと語った。しかし彼が就任した時点で、既に職員の大半はアメリカ人と日本人、そしてイタリア人で占められていた(ただしその多くは家族に途上国出身者がいた)という。「私は常に思っていた。各国の政治状況を注視し、その動きに対応して動く仕事である以上、この組織ではスタッフの構成にも(現実の多様性を)反映させるべきだと」
アントニオ・グテレス国連事務総長は以前から、国連内部に途上国、とりわけアフリカ出身者の数が足りないと考え、懸念を表明してきた。もう差別は解消されたと信じて「ポスト差別主義」の時代を標榜するのは幻想だとも指摘している。
アフリカは二重の犠牲者
「国連は平等と人間の尊厳を核とする新たな国際的総意に基づいて創設された。以後、世界に非植民地化の波が広がった」。グテレスは今年7月のネルソン・マンデラ記念講演(南アフリカのネルソン・マンデラ財団が主催する恒例のイベント)でそう語った。「だが自己欺瞞に陥るな。依然として世界は植民地主義の残滓を引きずっている」