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京大・柏原正樹氏が日本人初の受賞、「数学のノーベル賞」と称されるアーベル賞とは? フィールズ賞との違いは?

2025年3月27日(木)21時50分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
柏原正樹

アーベル賞を受賞した柏原正樹氏 Photo:Peter Badge/Typos1/The Abel Prize

<授与を決定したノルウェー科学文学アカデミーは柏原氏を「真の数学的先見者」と称賛。数学者を志したきっかけや、国内外で高く評価されてきたその業績の数々を紹介するとともに、2つの権威ある数学賞について解説する>

顕著な業績を挙げた数学者に贈られ、その権威や賞金額から「数学のノーベル賞」と呼ばれる「アーベル賞」の日本初の受賞者となった京都大学数理解析研究所の柏原正樹特任教授(78)が27日、京都大で記者会見し、「50年を超える研究全体が高く評価されたと感じています」と喜びを語った。

【動画】「とても驚いた」ノルウェー科学文学アカデミーからアーベル賞受賞を知らされた柏原氏の反応

柏原氏は1947年、茨城県結城市生まれ。ツルとカメの頭の数と足の数の合計を元にそれぞれ何匹いるかを求める「つるかめ算」に魅了され、数字の代わりにxやyといった文字を使って計算する代数学が好きになり、数学者を志した。進学先の東京大学で佐藤幹夫氏(京都大学数理解析研究所名誉教授)に師事し、修士論文で代数解析学の「D加群」と呼ばれる理論の基礎を確立した。

業績は代数解析学だけでなく、超局所解析、表現論、組み合わせ論、ホモロジー代数、シンプレクティック幾何、可積分系など多岐にわたり、数学者を長年悩ませた「リーマン・ヒルベルト予想(第21問題)」の解決者としても知られている。

これまでも国内外で高く評価され、生涯にわたり優れた業績を挙げた数学者に国際数学者会議(ICM)から贈られる「チャーン賞」(2018年)や、日本の国際賞で後にノーベル賞を受賞する者も多い「京都賞」(2018年)など、数多くの受賞歴を持つ。

26日に柏原氏へのアーベル賞授与を決定したノルウェー科学文学アカデミーは、「誰も想像しなかった方法で驚くべき定理を証明してきた。まさに真の数学的先見者だ」とたたえ、「常に現代数学の最前線におり、何世代もの研究者にインスピレーションを与え続けている」と評している。

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