多様性と平等を重視するはずの国連高官は白人ばかり
THE U.N.’S DIVERSITY PROBLEM
ちなみに広報担当官のゾーイ・パクストンはイギリス人で、以前は英国際開発省でローコックの部下として働いていた。「上級職に外部から多様な人材を採用する、国内担当から国際担当へと昇進させるなどの努力を重ねてきた」と言う。
パクストンによると最近OCHAでは欧米諸国以外の出身者を2人、上級職に起用した。フランスとスリランカの国籍を持つラメシュ・ラジャシンガムが人道問題担当の国連事務次長補代行、ヨルダン人のムハンナド・ハディがシリア担当の地域人道問題調整官を務めている。
ほかにも空席の上級職がいくつもあるため、「(非欧米人の)割合を増やす機会」があるとのことだ。2016年以降に欧米出身者の人数をOCHA全体の3分の2から2分の1くらいに減らしたとも、パクストンは言う。とはいえ「まだやるべきことがあり、ここで止まることはない」。
現場で働く職員でも、欧米人の割合は2016年以降、49%から42%にまで減ったという。国連全体では専門職の下級職員に占める欧米人の割合が60%から42%以下に減った。だが上級職に欧米人が起用されやすい傾向は変わっていない。
OCHA幹部15人を見ると、欧米人でないのは1人だけだ。広報のパクストンはローコックの国際開発省時代の部下だし、事務次長室も欧米人3名で切り盛りしている。うち首席補佐官もイギリス人で国際開発省の出身、副首席補佐官はスウェーデン人、秘書官はカナダ人だ。
OCHAは国連事務局のその他の機関に比べ、予算のかなり多くの部分を豊かな加盟国からの寄付に頼っている。それが採用や昇進にも影響しているようだ。国連本体の予算で運営されている部門では、より地理的多様性が高い。
内部の批判派によると、ローコックはその裁量権を用いて上層部を欧米人で固めてきた。最近スウェーデン、イタリア、ノルウェーなどの出身者を要職に起用したが、事前に募集をかけず、その他の職員は応募できなかったと多くの内部関係者が証言する。またニューヨーク本部では昇進の見込みがないことを理由に、士気が低下しているとされる。
昨年の内部調査によると、働きやすさや革新性、職員の定着率でOCHAは他部門に見劣りする。「非倫理的行為に関してあらゆる職位の者が責任を果たしていると考えるOCHA職員は半数に満たない(47%)」ことも判明している。
とりわけ本部職員の士気低下は深刻で、現地勤務の職員に比べて「権限が少なく、やる気が出ない」と感じているようだ。働きやすさや男女の平等についても、本部より現地事務所のほうがましだという。
だから「本部職員の間では満足度が相対的に低い」し、「ストレスは多く、上層部への信頼度は低く、昇進についての不満は高い」という。悲しいかな、人道支援の司令塔が人の道から外れている。
<2020年11月17日号掲載>
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