最新記事

ドイツ

メルケルの与党CDU、次期党首選めぐり深刻な内部亀裂

2020年11月2日(月)11時49分

醜い争い

ただ既に候補者同士の対立は泥仕合化し、個人攻撃の様相になりつつある。

メルツ氏は26日ロイターに、執行委員会の次期党首選延期は、CDUの基本原理に背くと語った。独紙ウェルトに対しては、対立候補の一人であるラシェット氏が自身のパフォーマンスを上向かせるための時間を稼ごうとしていることがはっきり分かったと強調した。

メルツ氏の盟友、ミヒャエル・フォン・アベルコン議員もラシェット陣営に厳しい見方をする。現執行部が自分を党首にしたがっていないというメルツ氏の見方をラシェット氏支持者が「陰謀論」だと必死で否定して回っている、と同議員は語り、いかにラシェット陣営が焦っているかが一目瞭然だと切り捨てた。

一方、執行部やラシェット氏は、パンデミックがある以上、12月4日に1001人の代議員をシュツットガルトに集めて党大会を開くのは不適切だと主張している。

世論調査に基づくと、CDU党員の間ではメルツ氏の方がラシェット氏やレットゲン氏よりも人気が高い。しかし党のエリート層、つまり代議員の大方はラシェット氏を応援するというねじれ現象がある。

ドイツ憲法の規定では、党大会自体はオンラインでも開催できるものの、幹部職の選出は対面方式が必要だ。郵便投票も考えられるが、今回は第1回投票で勝者が決まらず2回目の投票にもつれ込む公算が大きいので、かなり時間がかかってしまう。

党幹部の1人は「通常方式の党大会開催は避けられない。他の手段はいずれも難しい」と打ち明けた。

新型コロナの感染状況を見れば、通常方式の党大会ができるのは、来年のかなり進んだ時期になるかもしれない。一方、総選挙は来年10月24日までに行われる。SPDはショルツ財務相を首相候補に指名済みで、大連立を解消したい意向だ。

独週刊紙ツァイトのヨセフ・ヨッフェ編集長は「SPDと異なり、CDUはずっと政権を担っていけると信じており、それによって良質の軍隊のように規律が維持されている」と分析した上で、党首選延期は予測不能な結果をもたらすだろうが、もしドイツの公衆衛生環境と経済成長が立ち直れば、次期首相はCDU/CSU連合から出てくると予想した。

(Andreas Rinke記者 Paul Carrel記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ドイツは日本の「戦友」か「戦争反省の見本」か ドイツ人はどう見ている?
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力



20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中