メルケルの与党CDU、次期党首選めぐり深刻な内部亀裂
ドイツのメルケル首相(写真)が属する保守与党、キリスト教民主同盟(CDU)は世論調査で高い支持率になっているが、その人気の裏で、党上層部が非常に懸念する事態が進行している。ベルリンで21日代表撮影(2020年 ロイター)
ドイツのメルケル首相が属する保守与党、キリスト教民主同盟(CDU)は世論調査で高い支持率になっているが、その人気の裏で、党上層部が非常に懸念する事態が進行している。次期党首選の延期決定をきっかけに内部に深刻な亀裂が生じているという問題だ。
CDUの現党首アンネグレート・クランプカレンバウアー氏は、メルケル氏の後継として首相を目指すつもりはないとし、党首も退く意向を表明している。また事実上の指導者であるメルケル氏も、来年秋の総選挙後に引退する考えだ。
こうした中でCDUの執行委員会は26日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を理由として、12月4日に予定していた次期党首選の延期を決めた。ところが早速、候補者の1人で「非主流派」の立場を取ってきたフリードリヒ・メルツ元下院議員団長が、現執行部が自分を党首にしたくないのだとかみついた。
そもそも党首選を先送りすれば、主導権争いは少なくとも来年春まで続き、次期党首がメルケル氏の影を脱して秋の総選挙に臨むまでの時間が限られてしまう。党幹部らは本来なら強固なはずの党の結束と規律が整わないまま、選挙の年を迎えると懸念する。
ある最高幹部は「党首選後に敗北候補がおとなしくしていられなくなるのではないかとの不安が出ている」と語り、メルツ氏が党首選延期の不当性を声高に言い立てたことで、そうした可能性が強まったと指摘した。
27日に公表された独紙ビルト委託のINSA世論調査によると、CDUとキリスト教社会同盟(CSU)の保守連合の支持率は35.5%と、2位の緑の党の17.5%、3位の社会民主党(SPD)の14.5%を大きく引き離した。
CDUの支持率は、メルケル氏がパンデミック対応で見せた手腕への評価が押し上げている。ドイツでの新型コロナの感染者数が近隣諸国と比べ格段に少ないからだ。
それでもクランプカレンバウアー氏は、次期党首候補のメルツ氏、ノルトライン・ウエストファーレン州のアルミン・ラシェット州首相、外交政策に精通するノルベルト・レットゲン議員に対して、次期党首が決まった後に「(CDUに)重大なダメージを与えるような抗争」をしないよう戒めていると複数の党幹部が話している。