最新記事

アメリカ大統領選 中国工作秘録

【調査報道】中国の「米大統領選」工作活動を暴く

THE NEW CHINA SYNDROME

2020年11月5日(木)07時05分
ディディ・カーステンタトロー(ジャーナリスト)

これらの団体を特定するには会員登録の重複、定期的な共同活動、思想的な傾向、共産党のお墨付きなしでは呼べない要人との会合といったものを調べればいい。

本誌は人名と肩書を照合し、中国語の公文書や国営メディアで伝えられた協力事業、諸団体独自の報告書なども調べた。そして中国の好感度を増すための単純な努力から露骨な諜報活動まで、さまざまな行為を確認した。

そんなスパイ活動の一端が、去る9月下旬に発覚した。逮捕されたのはニューヨーク市警に属する警官で、チベット出身の移民だった。アメリカに帰化して市民権を持ち、陸軍の予備役でもあるが、実は中国政府の手先だったという。

この警官を操っていたのはニューヨークにある中国総領事館の職員で、統戦部に連なる中国チベット文化保護発展協会の仕事をしていた。警官はニューヨークにいる中国系住民に探りを入れる一方、市警本部の行事に中国の政府当局者を招待してもいた。

調べ始めるときりがない。統戦部とつながりのある団体はアメリカにも無数にありそうだ。中国語メディアや統戦部系団体の報告によると、30年ほど前に元国務長官ヘンリー・キッシンジャーの肝煎りで設立された中国系アメリカ人の権利団体「百人会」もその1つだ。南京統戦部のウェブサイトによれば、百人会の議長である著名な実業家ロジャー・ワン(王恒)は南京海外友好協会の名誉会長でもある。そして「海外友好協会」なる組織は、統戦部の地域支部と位置付けられている。

中国との付き合い方は難しい、と言うのはニューヨーク大学米亜法律研究所のアルビン・Y・H・チャン。「大事なのは、越えてはならない一線を越えないことだ」

<2020年11月10日号「アメリカ大統領選 中国工作秘録」特集より>

20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然

ビジネス

米連邦地裁、マスク氏の棄却請求退ける ツイッター株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中