バイデン、政権1年目に直面するFRB人事とは
こうした構図を差し引いても、パウエル議長が行った金融政策改革は、ボルカー元議長が1970年代末から80年代初頭にかけてFRBをインフレ退治の方向に軌道修正して以来、最も重要な改革の1つだったと言える。FRBの責務の順番を入れ替え、1番目を雇用促進に、2番目をインフレとの闘いにしたのだ。
この新しい枠組みが夏に公表されると、進歩主義派のエコノミストや労働組合幹部から賞賛を浴びた。バイデン氏の経済顧問トップ、ジャレッド・バーンスタイン氏は、新しい枠組みについて「耳に心地良い」と述べた。
副議長の任命
クラリダ、クオールズ両FRB副議長もバイデン次期政権の1年目に任期を迎える。クラリダ氏はエコノミストとして尊敬されており、FRBの戦略見直しをうまく司った。バイデン政権が金融規制強化を進めるなら、銀行監督担当のクオールズ氏は3人の中で続投の可能性が最も低いかもしれない。
トランプ氏はFRBの新理事2人を指名し、上院の承認待ちとなっている。しかし1月に現体制を終える上院が、それまでに承認するかどうかは不明だ。承認しなければバイデン氏はこの2ポストも埋めることになる。
このほか、FRBが金融政策を分析する際の基準に人種間資産格差や雇用の数値といった項目を盛り込ませるか否か、また盛り込むならどのような方法にするか、といった問題についても、バイデン氏は選択を求められる。
コロナ緊急プログラム
バイデン氏は、より短期的な問題にも直面するかもしれない。
新型コロナ禍で導入されたFRBの緊急貸し出し措置の多くは12月31日に期限切れとなり、延長にはトランプ政権の承認が必要になりそうだ。
FRB幹部らは、こうしたプログラムが金融市場の正常な動きを支えたと感じており、仮にトランプ氏が承認を拒めば、少なくともバイデン氏就任までの数週間は問題の火種になる恐れがある。
パウエル議長は先週、バイデン氏の大統領選勝利が確実になる前の段階で開いた記者会見で、米経済に緊急措置解除の準備が整っているかどうかについて、FRBはまだ結論に至っていないと説明した。
(Howard Schneider記者)
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