アメリカ大統領選、当日の「誤報リスク」 TV各局は当確の重圧
ウォルト・ディズニー傘下のABCニュースと、バイアコムCBS系列のCBSニュースには、外国勢力の選挙干渉や州ごとに異なる集計方法といった話題に密着する専門部門がある。CBSは「激戦州追跡」と名付けた手法を用い、投票結果や投票率統計、米国勢調査局統計、過去の投票パターンを組み合わせていく。
NBCニュースはコムキャスト傘下だが、専門の「投票ウオッチ」チームの規模を2倍にした。総勢24人で、投票権や、誤情報の選挙活動といった問題に詳しい特派員やリポーター、プロデューサーで構成する。チームはここ1年、フロリダやミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニア、アリゾナの5州で指標的な郡を1カ所ずつ選び出し、有権者の感じ方を報じてきた。
今回は大手テレビ局が異なる情報提供元からデータを入手する初めての大統領選となる。当日夜の結果の見通し状況が局によって分かれる可能性も大きい。
フォックスは2018年からAP通信と提携し、従来型の対面出口調査をオンラインと電話の調査に切り替えている。期日前投票と選挙当日の投票者の双方の動向を把握する狙いだ。調査結果はAPが集計するリアルタイムの結果と組み合わせ、開票予測の支援に用いる。
フォックスとAPは、3大ネットとAT&T傘下CNNなどが参加する業界連合「ナショナル・エレクション・プール」(NEP)を脱退している。NEPは各選挙区から上がってくる出口調査と開票結果を調査会社エジソン・リサーチに依存する。ロイターも今年の大統領選挙データはNEPから配信を受ける協定を結んでいる。
2016年以降、各局は各州の事前調査では性別や年齢だけでなく、学歴の違いにも比重を置く調整方法の恩恵を受けていそうだ。同年の大統領選では、トランプ氏ないし民主党候補ヒラリー・クリントン氏への支持動向で学歴による特徴が大きく出た。「大卒でない白人」の票がトランプ氏に多く流れたことが浮き彫りになったのだ。
各局の幹部らによると、今回の大統領選は「遅くても確実に」が合言葉だ。
ABCのジェームズ・ゴールドストン社長は各州の開票結果見通しについて、「確信できる所に達するには、より複雑でより長いプロセスが必要になる。視聴者に対しては情勢について透明性を確保する必要がある」と語った。
完全に予測不能
2000年大統領選のフロリダ州開票はブッシュ氏勝利があまりに僅差だったため、再集計に持ち込まれた。政治的な闘争と法廷闘争が1カ月以上続いたあげく、連邦最高裁が5対4の判断で再集計を停止させた。この最高裁決定はさらに国民の分断を呼び、一部の民主党関係者は当時のいきさつに今なお怒りを禁じ得ない。
しかし、そうした当時の出来事も今回と比べればおとなしく見えるかもしれない。党派的分断はもっとひどくなる一方だからだ。新型コロナウイルス禍で投票所での対面投票に警戒する人が増え、期日前投票は過去最多を記録している。そうした集計には何週間もかかるかもしれない。世論調査ではバイデン氏がリードしている状態だが、一部の政治専門家によれば、選挙当夜はトランプ氏が優勢になり、期日前投票や郵便投票がすべて集計されてはじめて、バイデン氏の勝利が浮上する可能性もある。