アメリカ大統領選、当日の「誤報リスク」 TV各局は当確の重圧

全米ネットのテレビ放送局などの報道局幹部らは、11月3日の大統領選当夜に向けた準備を進める中で、20年前に起きた悪名高い大統領選報道の顛末(てんまつ)から得た教訓を生かそうとしている。写真は2日未明、ホワイトハウスから報告する米メディアのリポーター(2020年 ロイター/Joshua Roberts)
全米ネットのテレビ放送局などの報道局幹部らは、11月3日の大統領選当夜に向けた準備を進める中で、20年前に起きた悪名高い大統領選報道の顛末(てんまつ)から得た教訓を生かそうとしている。民主党のアル・ゴア副大統領と共和党のテキサス州知事のジョージ・W・ブッシュ(子)氏が対決した選挙だ。
大手テレビ局はこぞって、勝敗を決める最後の鍵となったフロリダ州でゴア氏勝利の見通しを流した後、わずか数時間後にブッシュ氏勝利を報じた。同州での得票差は余りにも僅差で、いったん敗北を認めたゴア氏は1時間後に敗北宣言を取り消した。
選挙結果は1カ月以上たっても決まらなかった。選挙当夜に負けが決まったのはメディアの信頼性だけだった。
フォックス・ニュース・メディアのジェイ・ウォレス社長は「2000年のあの出来事は今なお皆の脳裏に残っていると思う」と語る。フォックスニュースも例にもれず、ゴア氏勝利を当初報じていた。「各局がしのぎを削る中で、大統領の当確を打たなければならないことは分かっているが、あんな風に間違うことだけは避けたい」と話す。
今年の共和党のトランプ大統領と民主党バイデン前副大統領の対決を前に、各テレビ局には選挙報道の正確さと、根拠のない臆測を排除する強い姿勢への要請がかつてないほど高まっている。今回、米国にとって、そして各局にとっての難問は、不正投票の不安をあおる大統領の存在と、有権者の深い分断、集計が長引いて抗議デモや暴力沙汰や訴訟につながる可能性だ。
大手テレビ局はスピードではなく自制を重視
ロイターが大手テレビ5局の幹部にそれぞれインタビューしたところ、選挙当夜の報道についてはスピードではなく自制を重視すること、まだ分かっていないことは何かを不透明にせず、選挙結果の判明の遅れが危機を意味するわけではないとのメッセージを伝えて国民を安心させることも重視するといった意思表明が返ってきた。
NBCニュースのノア・オッペンハイム社長は、同テレビの報道は「何らかしらの筋立てや物語、見込みを伝えるものにはしない」と明言。「それぞれの時点で分かっていること」を伝え、事実のみを確実に伝えることに照準を合わせるとした。
2000年当時の大統領選報道では、NBCの名物記者、ティム・ルサート氏がホワイトボードに走り書きしながら説明するといった光景が繰り広げられたが、今年の場合、多くはもっと科学的な方法になるのは間違いない。各局は、より多くの開票結果を盛り込んだ、より深いデータ分析や、投票やその公正さや誤情報の仕組みを追加的に報じることにいかに多くの投資をつぎ込んできたかを見せつけようとするだろう。