最新記事

アメリカ経済

米自動車業界、コロナショックから想定外の業績回復 SUVなど強い需要と在庫減

2020年10月3日(土)17時35分

米自動車メーカー各社は、今年春に新型コロナウイルスの大流行によって景気が悪化した際に大半の専門家や業界幹部が予想していなかった問題に直面している。写真は6月、シカゴのフォード工場で撮影(2020年 ロイター/Kamil Krzaczynski)

米自動車メーカー各社は、今年春に新型コロナウイルスの大流行によって景気が悪化した際に大半の専門家や業界幹部が予想していなかった問題に直面している。その問題とは、ディーラー網における強い需要と在庫の減少だ。

各社は10月1日に9月の米国内販売台数を発表する。専門家は年換算の販売台数が8月実績の1520万台を超えると予想している。利幅の大きいスポーツ用多目的車(SUV)やピックアップトラックの消費者需要は春以降、急速に持ち直している。

米自動車大手3社は、ディーラーの在庫を補充するため、自社の工場がフルスピードで操業していると明かしている。

ゼネラル・モーターズ(GM)の世界生産部門を率いるジェラルド・ジョンソン氏は「当社はフル稼働している」と語った。

それでも調査会社コックス・オートのシニアエコノミスト、チャーリー・チェスブラフ氏によると、北米の自動車生産台数は昨年実績を約200万台下回っている。同氏は「封鎖解除後の消費者需要は非常に力強く、業界の在庫補充能力を上回り続けるだろう」と述べた。

第3・四半期は通常、自動車業界が新型モデルの生産を始め、年末商戦へ向けて在庫を積み上げる時期だ。だが今年は、そうした動きへの移行が例年より大きく遅れている。

チェスブラフ氏は「2021年型モデルが今年これまでの在庫全体に占める比率は約2.7%にとどまっている」と指摘。「対照的に昨年の(在庫全体に対する新型モデルの)比率は約22%だった。自動車メーカー各社が今なお旧型モデルを生産している中、消費者は新型モデルを見つけられなくなっている」という。

収益の回復

販売の持ち直しに寄与しているのは、ノースカロライナ州に住む不動産業者マイケル・ディーンさん(58歳)のような顧客だ。彼は自分のオンライン水泳プール事業「プール・リサーチ」を拡大するため、トヨタの新型7人乗りランドクルーザー「プラド」を6万2500ドルで購入した。

ディーンさんの選択は当初、比較的手ごろな価格のSUVの三菱「パジェロ」だった。だが3000ドルの値引きを提示され、予算を1万2500ドル増やして「プラド」を買うことにした。

「私のオンライン事業は順調に進んでおり、将来の収入を楽観視している。その上、ディーラーの値引きにより、出費を増やすのが正当だと自分で納得できた」と語った。

コックス・オートとJDパワーは今年の米自動車販売台数を前年比約15%減と予想している。ただ見通しは今年、一時は30%超の減少となっていた。ムーディーズ・アナリティクスは28日、リポートに、中古車の供給もひっ迫しており、中古車の卸売価格は2019年8月と比べ約20%高い水準に押し上げられたと記した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、今週は据え置き 引き続き関税の影響と国内経

ビジネス

米バークシャー、バフェット氏除き取締役は80歳で退

ビジネス

日経平均は続伸、米株の自律反発を好感 半導体株しっ

ビジネス

米食肉工場1000カ所以上の対中輸出登録が失効、5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自然の中を90分歩くだけで「うつ」が減少...おススメは朝、五感を刺激する「ウォーキング・セラピー」とは?
  • 2
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 3
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研究】
  • 4
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 5
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    エジプト最古のピラミッド建設に「エレベーター」が…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 9
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 10
    奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」…
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 10
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中