対中デフォルト危機のアフリカ諸国は中国の属国になる?
Does China Engage in Debt Trap Diplomacy?
中国は既にアフリカ諸国の主要な貿易相手国になっている。さらに安全保障でも影響力を広げようと、2018年には北京で第1回中国アフリカ防衛安全保障フォーラムを開催した。
「このフォーラムは中国の人民解放軍が主催し、大半のアフリカ諸国が参加した」と、フィッシャーは言う。「中国はこれを手始めにアフリカ諸国と軍事的な関係を強化し、経済・政治的な誘導と併せて、軍事的なアクセスを確保しようとしている。債務の罠は様々なツールの1つにすぎず、中国は政治、経済、軍事に及ぶはるかに遠大な企みを持っている」
直近の例としては、既にザンビアが中国の債権者に返済延期を求めている。対中債務はザンビアの対外債務120億ドルのざっと4分の1を占める。
ケニアも45億ドルの対中債務について再交渉を望んでいる。ケニアの議会予算割当委員会のキマニ・イチュンワ委員長は地元メディアに「債務問題の解決は実に簡単だ」と述べた。「中国側にわれわれの過失を認めればいい。多額の借金をしたのは事実だが、あなた方も非常に厳しい返済条件を付けた。わが国の経済は疲弊し、返済が困難になっているが、債務を帳消しにしてほしいわけではない。再交渉をして返済条件を変えてほしいだけだ、と」
借金棒引きには難色
10月半ばにテレビ会議方式で行われた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)はコロナ禍で財政が悪化した77カ国・地域の債務の返済を猶予することで合意し、中国も渋々この案をのんだ。ただケニアは、資本市場での資金調達が困難になる恐れがあるため、返済猶予を求めない方針を表明している。
報道によれば、中国は将来的な債務帳消しには二の足を踏んでいる。また中国は全ての国有機関をG20のテレビ会議に参加させたわけではない。そのため十分な救済措置が取られることは望み薄で、世界銀行のチーフエコノミスト、カーメン・ラインハートは関係各国に「最善を願いつつ、最悪に備える」よう呼びかけた。
ジョンズ・ホプキンズ大学の中国アフリカ研究イニシアチブが2015年に発表したデータによると、アフリカの17カ国が危険なレベルの対中債務を抱えており、デフォルトに陥る可能性がある。
コロナ禍で途上国が抱える対中債務はさらに膨張しそうだ。中国はアフリカ諸国が抱える無利子債務を帳消しにしたが、ジョンズ・ホプキンズ大の研究チームによれば、アフリカ諸国の対中債務に占める無利子債務の割合は5%に満たない。