最新記事

債務の罠

対中デフォルト危機のアフリカ諸国は中国の属国になる?

Does China Engage in Debt Trap Diplomacy?

2020年10月22日(木)17時45分
バシト・マフムード

さらに問題を複雑にしているのは、中国の国有機関だけでなく、民間企業もアフリカ諸国に融資していることだ。ジョンズ・ホプキンズ大のチームによれば、30余りの銀行と企業がアフリカのインフラ事業などに融資をしていて、その一部は市場金利に基づく利払いを求めている。これらについても融資条件の再交渉が必要になる。

今のところG20は民間企業に対しては、合意がまとまった返済猶予に協力するよう呼びかけるにとどまり、世銀も中国政府に対し、国内の債権者に圧力をかけるよう求めただけだ。

とはいえ、中国が悪辣な高利貸しのように借金のカタに貧困国の資産を奪うといった見方には懐疑的な専門家もいる。

「全くもってナンセンス。ただの神話だ」と言ったのは、ロンド大学クィーンメリー校の准教授(国際政治)で中国の外交政策の専門家であるリー・ジョーンズだ。「借金苦にあえぐ途上国から建設したインフラを奪うつもりで、中国がわざと債務の罠を仕掛けているなどという考えは馬鹿げている。何の根拠もない作り話だ。

「そんなものは、インドのシンタンクが触れ回り、アメリカが政治的な理由から取り上げた理屈に過ぎず、そんなことは実際には起こっていない。中国が、建設しても使えなくて補修費も稼げないようなインフラにわざわざ金を貸すと思うか? もちろんだ。だがそれは発展途上国を罠にかけるためではない。国有企業に仕事が必要だからやっている。彼らは大変な過剰在庫を抱えて処分したくてたまらない。だから途上国の好意に甘えようとしているのだ」

中国の王毅外相が言うように、中国の命運が依然「一帯一路」に掛かっているのは言うまでもない。パンデミックの只中でも、中国とアフリカ諸国との貿易は増加しており、債務問題がどうなるかは注意深く見守る必要がある。世界人口の半分が直接関わる問題なのだから、その重要性は説明するまでもないだろう。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏にクリスマスメッセージ=

ワールド

ローマ教皇レオ14世、初のクリスマス説教 ガザの惨

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 5
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 10
    【銘柄】「Switch 2」好調の任天堂にまさかの暗雲...…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中