インドネシアのパプア人牧師殺害事件、国家人権委員会が独自調査 軍が学校に駐屯など新事実も
これに対し人権委の調査チームを率いたコイルル・アナム代表によると、人権委の調査チームは現地パプアの人権委支部の協力などによる現地調査を通じて「十分な情報」を住民からの聞き取りで得た。
さらにエレミア牧師の家族からの情報提供、現場検証による資料や情報を得ており、現在専門家による客観的な検証作業で「結論の中立性」の担保に務めているという。
政府調査と異なる独立性、公正性を強調
コイルル代表は10月17日に開いた記者会見で「エレミア牧師殺害事件は独立した一つの事件ではなく、インタンジャヤ県で2020年になってから連続して発生している一連の事件と関連した事件とみるのが正しい」との見解を示した。
そして「我々の調査チームは政府が指名、編制、派遣した調査チームとは一切関係がなく独立した調査を実施した」とマフード調整相(政治法務治安担当)の指示で調査を行った政府調査チームとは異なり「独立した調査チーム」であることを重ねて強調した。
マフード調整相の指示で編成された「政府調査チーム」は当初同調整相が「真相解明に客観的に全力で当たるよう指示した」としながら、蓋を開けたら警察や軍関係者が含まれたメンバー構成となり、現地パプアやマスコミからは「客観的で中立、公正な調査結果が期待できるメンバーでは到底ない」と批判が噴出。またパプアのキリスト教会団体からは「受け入れ拒否」が表明された。
こうした政府調査団のメンバーによる調査は住民や教会関係者の非協力的姿勢で迎えられた結果、十分な調査ができる状況ではなかったことが判明している。
人権委の調査結果への期待
パプアの人権問題を扱う団体やキリスト教会関係者は、今回の人権委の調査チームを歓迎し調査には積極的に協力したことから、いずれ発表される調査結果への期待が集まっている。特に殺害されたエレミア牧師の家族が人権委の関係者に対して「人権委の調査結果が正義を実現することにつながるよう期待する」と表明したとしている。
人権委の調査チームは、パプア州を訪問している間、地元パプア教会協議会から「政府に宛てたパプアへの軍や警察の増派を中止するようにとの書簡を受け取った」とし、現地住民の多くが治安部隊によらない平和的なパプア問題の解決を望んでいることをインドネシア政府に伝えたという。