文在寅政権の集会禁止はコロナ対策か政治弾圧か
マスクとフェイスシールドを着用して警備に立つソウルの警察官(10月9日) AP/AFLO
<リゾート地や遊園地、国際空港が多くの人でにぎわうなか、抗議デモが計画されていた広場にだけ警察を出動させた政府。国民からは「まるで戒厳令」と批判の声>
韓国の警察当局は建国記念日の10月3日、ソウル中心部で約300台の警察バスを動員して壁を作った。1万1000人以上の警官が配備され、光化門広場への一般人の立ち入りは最小限に制限された。地下鉄は広場近くの駅を通過。車や歩行者は停止を命じられ、行き先を尋ねられた。
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるなか、広場で計画されていた文政権への抗議デモを止めるためのものだ。
しかし、当局の対応はすぐさま反発を買い、独裁政権の時代を想起させるという批判の声も出た。一部のネットユーザーは、「まるで戒厳令のようだ」と不満を漏らした。
パンデミック(世界的大流行)対策という点から見れば、大規模な抗議行動を阻止する決定は理にかなっている。国民の側も、感染拡大につながりかねない大規模な抗議行動への参加は控えるべきだ。
それでも政府の措置に対しては、国民の集会とデモの自由を保障する憲法上の権利を守る姿勢を示さなかったという批判の声が上がっている。
集会禁止の目的はウイルス拡散防止だと、政府は主張する。だが多くの人々は、文政権への批判の高まりを抑えるための措置と受け止めた。
この日はリゾート地や遊園地も多くの人でにぎわった。ソウル大公園には推定2万人前後が集まり、済州国際空港の利用者は約4万人に達した。
10月1日には、与党・共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表が烽下村にある故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の墓地を訪れたが、現地には主に文政権の支持者とみられる大勢の人だかりができた。
だが、警察が出動したのは光化門広場だけだった。政府の目的が「人々が集まるのを止める」ためだったとすれば、今回の措置は理屈に合わない。
抗議運動の主催者は8月の大規模デモから教訓を学んでいた。この時はデモが感染拡大に一役買ったと批判され、実際に多くの参加者が新型コロナウイルスに感染した。
そこで主催者側は、10月3日に「ドライブスルー」と名付けた抗議行動を行うことにした。光化門広場を次々に車で通過しながら、抗議の意思表示としてクラクションを鳴らすというものだ。
しかし、政府はこれも阻止する動きに出た。ドライブスルー式抗議デモの参加者は運転免許を取り消し、罰金を科すと脅したのだ。この強硬措置は、政府が懸念しているのは感染拡大だけではないという多くの人々の疑念を強めることになった。