アメリカ雇用回復が鈍化 コロナショック直撃職種に「失業長期化」の懸念
新型コロナウイルスのパンデミックが米国の労働市場に大打撃を与えてから半年余り。写真はバージニア州アレクサンドリアの飲食店で5月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)
新型コロナウイルスのパンデミックが米国の労働市場に大打撃を与えてから半年余り。今も失業している数百万の人々は、たとえ以前に従事していた仕事に戻れるとしても、あと何年も先になる可能性があると覚悟しつつある。
夏場まで目覚ましかった米雇用情勢の改善は、足元で鈍ってきた。バーテンダーや家政婦といった旅行、娯楽、対個人サービス関係の仕事をしていた人たちは待機を強いられている。これらの業界が需要の冷え込みに対応しなければならず、米経済もパンデミック長期化の影響にさらされ始めたからだ。
米労働省が先週発表した9月雇用統計によると、労働力人口全体は約1億4200万人とコロナ前を7%下回る水準だったのに対して、娯楽・接客セクターはコロナ前に比べて23%減と、どの業界よりも低調だ。関連企業にとって全面的な事業再開が難しくなったため、従業員を一時帰休させる動きは完全な解雇の動きに変わりつつある。
ウォルト・ディズニーは先月、2万8000人の人員削減を発表。ユナイテッド航空とアメリカン航空は3万2000人を休業させるとしているが、映画館チェーン世界第2位のシネワールドは米国で約2万人の雇用を減らす方針だ。
一方パンデミック中に需要が高まるか、生活に不可欠なサービスを提供する小売り、公益などの分野では雇用が急速に回復し、2月の水準をほぼ取り戻した。
クリーブランド地区連銀のメスター総裁は先週ロイターに「まるで2種類の経済が動いているようだ。セクターごとに(状況が)非常に異なっている」と語った。
世界が一変
コロナの痛手が大きかった業界で解雇された労働者にとって、新たな仕事の機会はほんの数えるほどしかなく、競争は激しい。
ラスベガスのカジノでバーテンダーとして働いていたマシュー・シーバーズさん(36)は5月に解雇された。これまで5つの仕事に応募したが、どこからも採用の返事をもらっていない。「自分の住む世界は何もかもが一変した」と意気消沈しながらも、住宅ローンの返済猶予期間の半年での失効前には次の仕事を見つけたいと考えている。
インディード・ハイアリング・ラボの分析では、9月の求人広告件数は増加した。ただ必ずしも失業者が最も多い業種が働き手を募集しているわけではない。小売りや、ドライバーや配送が必要な仕事では前年並みに近づくか、むしろ超える動きがある一方で、接客、観光関連の求人は前年比で50%近く減り、調理、保育も約20%減少した。
同社の北米担当経済調査ディレクター、ニック・バンカー氏は「雇用の構成が変わっているのは間違いない」と話す。中程度ないし高水準の賃金の雇用よりも、およそ3万ドル未満の低賃金の雇用回復ペースの方が急速だという。