アメリカ雇用回復が鈍化 コロナショック直撃職種に「失業長期化」の懸念
グロリベル・カスティロさん(50)は7月上旬、ベッドメークや清掃などの仕事を担当していたマンハッタンのホテルから今年2回目の自宅待機を言い渡されて以来、働けずにいる。全米旅行産業協会の報告書は9月21日の週で、ニューヨーク州着の航空会社の国内線と州内のホテル予約件数が前年比81%減だったと記しており、現状は厳しい。
別の仕事に就ければうれしいというカスティロさんだが、税引き前でおよそ週1400ドルの賃金や手厚い医療制度、残業手当というこれまでの好待遇が引き続き得られるかどうか不安も抱える。そのためホテルが今春、医療従事者の拠点になったことで従業員を呼び戻したような事態がまたあるのではないかとの期待を捨てていない。当面は、週に442ドル受け取っている失業保険給付金に加えて、低所得者向け食料支援サービス(フードスタンプ)を申請することを検討中。それでも家賃と光熱費で1300ドル近く支払うと、自分と娘の食費として残るのは毎月100ドル程度にすぎない。
職業訓練求める声
雇用の伸びが鈍る中で、働けない期間が長くなっている人が増えている。
米労働省によると、27週間以上仕事をしていない人は9月に78万1000人増えて240万人になった。これと別に完全解雇されたのは34万5000人増の380万人に上った。
一部のエコノミストは、2008年の金融危機と同じようにパンデミックが労働市場の構造の長期的変化の引き金になったのではないかと懸念している。08年当時は、経費節減や技術の発展によって、事務、管理、製造、建設といった職種で雇用が落ち込み、二度と07年の水準に戻らなかった。
政策担当者からは、労働者が新たな仕事を得るための訓練を受ける必要が出てきているのではないかとの声も聞かれる。リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は先週ブルームバーグテレビで、失業者のキャリア再構築支援が「われわれの取り組みにとってかなり重要な項目」だと認めた。
元バーテンダーのシーバーズさんは、コンピューター系の技術習得を検討している。「前の仕事に戻れなければ、もっと将来性のある別の仕事を見つけ出すだけだ」と前を向いた。
(Jonnelle Marte記者)
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