最新記事

アメリカ経済

アメリカ雇用回復が鈍化 コロナショック直撃職種に「失業長期化」の懸念

2020年10月10日(土)10時23分

新型コロナウイルスのパンデミックが米国の労働市場に大打撃を与えてから半年余り。写真はバージニア州アレクサンドリアの飲食店で5月撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

新型コロナウイルスのパンデミックが米国の労働市場に大打撃を与えてから半年余り。今も失業している数百万の人々は、たとえ以前に従事していた仕事に戻れるとしても、あと何年も先になる可能性があると覚悟しつつある。

夏場まで目覚ましかった米雇用情勢の改善は、足元で鈍ってきた。バーテンダーや家政婦といった旅行、娯楽、対個人サービス関係の仕事をしていた人たちは待機を強いられている。これらの業界が需要の冷え込みに対応しなければならず、米経済もパンデミック長期化の影響にさらされ始めたからだ。

米労働省が先週発表した9月雇用統計によると、労働力人口全体は約1億4200万人とコロナ前を7%下回る水準だったのに対して、娯楽・接客セクターはコロナ前に比べて23%減と、どの業界よりも低調だ。関連企業にとって全面的な事業再開が難しくなったため、従業員を一時帰休させる動きは完全な解雇の動きに変わりつつある。


ウォルト・ディズニーは先月、2万8000人の人員削減を発表。ユナイテッド航空とアメリカン航空は3万2000人を休業させるとしているが、映画館チェーン世界第2位のシネワールドは米国で約2万人の雇用を減らす方針だ。

一方パンデミック中に需要が高まるか、生活に不可欠なサービスを提供する小売り、公益などの分野では雇用が急速に回復し、2月の水準をほぼ取り戻した。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁は先週ロイターに「まるで2種類の経済が動いているようだ。セクターごとに(状況が)非常に異なっている」と語った。

世界が一変

コロナの痛手が大きかった業界で解雇された労働者にとって、新たな仕事の機会はほんの数えるほどしかなく、競争は激しい。

ラスベガスのカジノでバーテンダーとして働いていたマシュー・シーバーズさん(36)は5月に解雇された。これまで5つの仕事に応募したが、どこからも採用の返事をもらっていない。「自分の住む世界は何もかもが一変した」と意気消沈しながらも、住宅ローンの返済猶予期間の半年での失効前には次の仕事を見つけたいと考えている。

インディード・ハイアリング・ラボの分析では、9月の求人広告件数は増加した。ただ必ずしも失業者が最も多い業種が働き手を募集しているわけではない。小売りや、ドライバーや配送が必要な仕事では前年並みに近づくか、むしろ超える動きがある一方で、接客、観光関連の求人は前年比で50%近く減り、調理、保育も約20%減少した。

同社の北米担当経済調査ディレクター、ニック・バンカー氏は「雇用の構成が変わっているのは間違いない」と話す。中程度ないし高水準の賃金の雇用よりも、およそ3万ドル未満の低賃金の雇用回復ペースの方が急速だという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸

ビジネス

大和証G、26年度までの年間配当下限を44円に設定

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ弾道ミサイル発射=韓国軍

ワールド

ロシア、対西側外交は危機管理モード─外務次官=タス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中