溺死した男児の写真から5年──欧州で忘れられた難民問題
WHERE’S THE “EXTRA COMPASSION”?
英国赤十字社のマイク・アダムソンは言う。「トルコで、あるシリア難民に会った。アレッポで歯科医をしていた女性だ。どの国に行きたいかと聞くと、彼女は私の目を見て言った。『私たちはみんな、アレッポにある自宅の鍵を肌身離さず持っている』と。つまり、本当は故郷に帰りたいのだ。この大勢の人たちがヨーロッパに行きたがっているというのは、単なる神話だ」
世界には祖国を追われた人が約8000万人いる。故郷に戻りたくても戻れない人が、シリアだけで1320万人いる。そのうち660万人は難民、つまり異国に暮らしている。大変な数だ。どうすればいいのか。
「難民が問題だと思うなら、難民をこれ以上増やすな」。ある抗議集会でそんなプラカードを見掛けたと、ジョージャウは言う。
「もし欧米諸国が環境破壊を止める措置を取らないなら、市民への爆撃を防ぐ措置を取らないなら、紛争の火種となった過去の行為に対して責任を取らないなら、彼らが逃げてくるのを止めることはできないし、彼らに対して倫理的に正しい政策を実行することもできない」と、ジョージャウは続けた。「彼らはなぜ、今ここにいるのか。かつて私たちが、彼らの地を踏みにじったからだ」
<2020年10月6日号掲載>