電通、東京五輪招致へ巨額の寄付とロビー活動 中立性求めるIOCの規定に抵触か
樋口氏と鳥田浩平・招致委事務次長(当時)の両氏は、ロイターの取材に対し、電通の意見がタン氏採用の鍵を握っていたと述べている。鳥田氏は第三者委の聞き取りに対し、中村氏から「(このコンサルタントは)すごくいいよ」と言われたら、「やりたい(採用したい)という気持ちがあった」と答えている。
ロイターが閲覧したJOCの調査記録によると、鳥田氏は2013年7月にタン氏を採用してから「電通にいろいろ間に入ってもらった」と言い、電通の職員が報告書や請求書の取り次ぎをしていたとも指摘。鳥田氏と電通の中村氏は第三者委の聞き取りに対し、電通がタン氏と頻繁に連絡を取っていたと話している。
電通は、タン氏の採用に積極的な役割を果たしたことや同氏との接触を調整したことは否定。同社は「招致委によるタン氏とのコミュニケーション窓口を当社が担っていたという事実はない」と述べている。
招致委の樋口、鳥田両氏はロイターの取材に対し、JOC第三者委に話した内容についての詳細な質問には答えず、招致委と電通の関係は適切だったとだけ述べている。
タン氏は、ロイターがコメントを求めても答えなかった。パパ・マサッタ・ディアク氏は不正行為を否定し、東京五輪に関する調査には協力しないとロイターに語った。フランスのラミン・ディアク氏の弁護士であるシモン・ニジャエ氏はロイターに対し、ディアク氏は東京大会での贈収賄疑惑とは何の関係もないと語った。
消えた「成功報酬」の存在
JOC第三者委は東京招致で汚職が行われたかどうかに関する最終報告書を2016年9月1日に公表、その中で不正行為はなかったとの見解を示した。関係者によると、聞き取り内容を含む調査の記録は汚職捜査をしているフランス検察当局には渡っていない。JOCは「フランスの捜査当局に提供する立場にはない」と説明している。
フランス捜査当局はJOC前会長の竹田恒和氏を汚職に関与した疑いで「正式な捜査」の対象にしている。竹田氏は2013年当時、招致委の理事長を務めており、タン氏の雇用を承認した。同氏の弁護士、ステファン・ボニファシ氏によると、竹田氏は不正行為を否定しているという。
第三者委の記録によると、2013年9月にIOCのブエノスアイレス総会で東京招致が決まった直後、電通の職員が東京の招致委関係者に連絡し、タン氏からの追加支払い要求を伝えた。
銀行の記録によると、その1カ月後、タン氏は招致委から2回目の130万ドルの支払いを受けた。この支払いの契約書を作成した鳥田氏は、JOCの第三者委に、これは東京招致の成功についてコンサルタントに支払われる「成功報酬」だと話した。
しかし、ロイターが閲覧した2013年10月4日付の契約書には、この金額は招致活動を分析した報告書に対する支払いとして記載されており、タン氏に渡った資金が成功報酬であるとの言及はなかった。
*日本政府のコメントなどを追加し、再送します。
(Antoni Slodkowski記者、斎藤真理記者、Nathan Layne記者、取材協力:Gabrielle Tetrault-Farbe 日本語記事編集:北松克朗)
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