最新記事

東京五輪

電通、東京五輪招致へ巨額の寄付とロビー活動 中立性求めるIOCの規定に抵触か

2020年10月15日(木)17時49分

樋口氏と鳥田浩平・招致委事務次長(当時)の両氏は、ロイターの取材に対し、電通の意見がタン氏採用の鍵を握っていたと述べている。鳥田氏は第三者委の聞き取りに対し、中村氏から「(このコンサルタントは)すごくいいよ」と言われたら、「やりたい(採用したい)という気持ちがあった」と答えている。

ロイターが閲覧したJOCの調査記録によると、鳥田氏は2013年7月にタン氏を採用してから「電通にいろいろ間に入ってもらった」と言い、電通の職員が報告書や請求書の取り次ぎをしていたとも指摘。鳥田氏と電通の中村氏は第三者委の聞き取りに対し、電通がタン氏と頻繁に連絡を取っていたと話している。

電通は、タン氏の採用に積極的な役割を果たしたことや同氏との接触を調整したことは否定。同社は「招致委によるタン氏とのコミュニケーション窓口を当社が担っていたという事実はない」と述べている。

招致委の樋口、鳥田両氏はロイターの取材に対し、JOC第三者委に話した内容についての詳細な質問には答えず、招致委と電通の関係は適切だったとだけ述べている。

タン氏は、ロイターがコメントを求めても答えなかった。パパ・マサッタ・ディアク氏は不正行為を否定し、東京五輪に関する調査には協力しないとロイターに語った。フランスのラミン・ディアク氏の弁護士であるシモン・ニジャエ氏はロイターに対し、ディアク氏は東京大会での贈収賄疑惑とは何の関係もないと語った。

消えた「成功報酬」の存在

JOC第三者委は東京招致で汚職が行われたかどうかに関する最終報告書を2016年9月1日に公表、その中で不正行為はなかったとの見解を示した。関係者によると、聞き取り内容を含む調査の記録は汚職捜査をしているフランス検察当局には渡っていない。JOCは「フランスの捜査当局に提供する立場にはない」と説明している。

フランス捜査当局はJOC前会長の竹田恒和氏を汚職に関与した疑いで「正式な捜査」の対象にしている。竹田氏は2013年当時、招致委の理事長を務めており、タン氏の雇用を承認した。同氏の弁護士、ステファン・ボニファシ氏によると、竹田氏は不正行為を否定しているという。

第三者委の記録によると、2013年9月にIOCのブエノスアイレス総会で東京招致が決まった直後、電通の職員が東京の招致委関係者に連絡し、タン氏からの追加支払い要求を伝えた。

銀行の記録によると、その1カ月後、タン氏は招致委から2回目の130万ドルの支払いを受けた。この支払いの契約書を作成した鳥田氏は、JOCの第三者委に、これは東京招致の成功についてコンサルタントに支払われる「成功報酬」だと話した。

しかし、ロイターが閲覧した2013年10月4日付の契約書には、この金額は招致活動を分析した報告書に対する支払いとして記載されており、タン氏に渡った資金が成功報酬であるとの言及はなかった。

*日本政府のコメントなどを追加し、再送します。

(Antoni Slodkowski記者、斎藤真理記者、Nathan Layne記者、取材協力:Gabrielle Tetrault-Farbe  日本語記事編集:北松克朗)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国共産党化する日本政治
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ


20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中