最新記事

感染症対策

エイズ患者に不当な風評「HIV陽性者はコロナ感染リスクが高い」 コロナ禍で対策が数年も逆戻り

2020年10月20日(火)18時27分

マラウイの学生コンドワニさんは、人生の大半を通じて、HIV陽性という不名誉なレッテルに立ち向かってきた。だがCOVID-19によって、再び旧態依然とした偏見が甦り、「コロナ持ち」という新たな罵倒の言葉が生まれている。写真は新型コロナウイルスのイラストレーション。米疾病対策センターが1月に提供(2020年 ロイター/Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAM/CDC)

マラウイの学生コンドワニさんは、人生の大半を通じて、HIV陽性という不名誉なレッテルに立ち向かってきた。だがCOVID-19によって、再び旧態依然とした偏見が甦り、「コロナ持ち」という新たな罵倒の言葉が生まれている。

「HIV陽性者は新型コロナに感染するリスクが高い」という誤解が広まったことで差別がさらにあおられ、HIV陽性者が必要とする医療にアクセスすることがますます困難になっている、とアフリカ南部の国マラウイの医療啓発活動家は語る。

24歳のコンドワニさんによれば、この偏見により、マラウイのHIV陽性者110万人のあいだに不安が広がっているという。英国の慈善団体アバートによれば、マラウイは世界でもHIV感染率が最も高い国の1つである。

姓を明かさない条件でトムソン・ロイター財団の取材に応じたコンドワニさんは、「こうしたレッテル貼りのせいで、HIVを抱えて生きている人にとって不必要な恐怖が生じている」と語った。

いわれなき中傷、外出もできず

「誰もが新型コロナに感染し、命を落とす可能性がある(というのが真実だ)」と農学専攻のコンドワニさんは言う。

国連共同エイズ計画(UNAIDS)の上級科学顧問ピーター・ゴッドフリーフォーセット氏によれば、HIVとCOVID-19の関連を示す証拠はまだ解明途上であるという。

同氏はメールのなかで、「HIV陽性者の場合、新型コロナウイルスの感染リスク、あるいは重症化リスクがわずかに高いように思われるが、そのリスクは、高齢や肥満、糖尿病といった他の条件・特性に比べると段違いに低い」と述べている。

だが医療従事者や支援活動家によれば、マラウイで暮らすHIV陽性者の多くは今、新型コロナに感染することを恐れるあまり、ステイホームに徹しており、薬の受取り予約をキャンセルしたり、支援グループの会合にも欠席しているという。

またUNAIDSでマラウイ担当ディレクターを務めるヌハ・シーゼイ氏によれば、ロックダウン期間中はHIV検査実施件数も35%減少したという。医療啓発活動家は、COVID-19のパンデミックのせいで、マラウイで着実に進展してきたHIV/AIDS対策が数年分は逆戻りしてしまう可能性があると懸念している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン

ワールド

中国のハッカー、米国との衝突に備える=米サイバー当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中