エイズ患者に不当な風評「HIV陽性者はコロナ感染リスクが高い」 コロナ禍で対策が数年も逆戻り
マラウイの学生コンドワニさんは、人生の大半を通じて、HIV陽性という不名誉なレッテルに立ち向かってきた。だがCOVID-19によって、再び旧態依然とした偏見が甦り、「コロナ持ち」という新たな罵倒の言葉が生まれている。写真は新型コロナウイルスのイラストレーション。米疾病対策センターが1月に提供(2020年 ロイター/Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAM/CDC)
マラウイの学生コンドワニさんは、人生の大半を通じて、HIV陽性という不名誉なレッテルに立ち向かってきた。だがCOVID-19によって、再び旧態依然とした偏見が甦り、「コロナ持ち」という新たな罵倒の言葉が生まれている。
「HIV陽性者は新型コロナに感染するリスクが高い」という誤解が広まったことで差別がさらにあおられ、HIV陽性者が必要とする医療にアクセスすることがますます困難になっている、とアフリカ南部の国マラウイの医療啓発活動家は語る。
24歳のコンドワニさんによれば、この偏見により、マラウイのHIV陽性者110万人のあいだに不安が広がっているという。英国の慈善団体アバートによれば、マラウイは世界でもHIV感染率が最も高い国の1つである。
姓を明かさない条件でトムソン・ロイター財団の取材に応じたコンドワニさんは、「こうしたレッテル貼りのせいで、HIVを抱えて生きている人にとって不必要な恐怖が生じている」と語った。
いわれなき中傷、外出もできず
「誰もが新型コロナに感染し、命を落とす可能性がある(というのが真実だ)」と農学専攻のコンドワニさんは言う。
国連共同エイズ計画(UNAIDS)の上級科学顧問ピーター・ゴッドフリーフォーセット氏によれば、HIVとCOVID-19の関連を示す証拠はまだ解明途上であるという。
同氏はメールのなかで、「HIV陽性者の場合、新型コロナウイルスの感染リスク、あるいは重症化リスクがわずかに高いように思われるが、そのリスクは、高齢や肥満、糖尿病といった他の条件・特性に比べると段違いに低い」と述べている。
だが医療従事者や支援活動家によれば、マラウイで暮らすHIV陽性者の多くは今、新型コロナに感染することを恐れるあまり、ステイホームに徹しており、薬の受取り予約をキャンセルしたり、支援グループの会合にも欠席しているという。
またUNAIDSでマラウイ担当ディレクターを務めるヌハ・シーゼイ氏によれば、ロックダウン期間中はHIV検査実施件数も35%減少したという。医療啓発活動家は、COVID-19のパンデミックのせいで、マラウイで着実に進展してきたHIV/AIDS対策が数年分は逆戻りしてしまう可能性があると懸念している。