最新記事

感染症対策

エイズ患者に不当な風評「HIV陽性者はコロナ感染リスクが高い」 コロナ禍で対策が数年も逆戻り

2020年10月20日(火)18時27分

ブランタイアで活動するマラウイの医療啓発活動家グレイス・ングルベ氏(25歳)は、「咳やくしゃみをしただけで、新型コロナでないかと疑われてしまう。HIV陽性者であることが知られていると、それがさらに顕著だ。人々は今、自分がHIV陽性であるかどうかをオープンに口にすることさえ恐れている」と話す。

「通院するのも怖い」

米疾病管理予防センター(CDC)によれば、HIV陽性者が新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの主要な原因は、CD4細胞の数が少ない、つまり効果的な抗レトロウイルス療法を受けていないことだという。

UNAIDSのシーゼイ氏によれば、マラウイのHIV陽性者110万人のうち、抗レトロウイルス療法を受けているのは約80万2000人である。

マラウイにおける新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでのところ比較的穏やかである。アフリカ疾病予防管理センターによれば、感染者は5800人、死者は約180人である。

だがパンデミックによる経済への打撃は深刻であり、政府は予算資源を医療分野に回さざるをえず、財政赤字を補填し食料安全保障を確保するために外部からの資金調達を模索している。

また1800万人近い人口を抱えるマラウイ国内の支援グループや医療施設では、HIV/AIDSなどの主要な公衆衛生上の危機に関する治療や啓発キャンペーンについて再考せざるをえなくなっている。

「男性の自発的な包皮切除やHIV啓発プログラムは中止された。多くの人々が集まることで新型コロナ感染のリスクにさらされないようにするためだ」とシーゼイ氏は言う。

地域開発を学ぶ22歳の学生ホープ・バンダさんによれば、彼女をはじめとするHIV陽性者は、最近訪れた病院でスタッフから疑いの目を向けられる経験をしているという。

ブランタイアの祖母の家で取材に応じたバンダさんは、「私たちの多くは今、病院に行くことを恐れている。入口のところで、保健手帳をチェックされるからだ」と話す。

マラウイの「保健手帳」には患者の病歴が記載されており、そこにはHIV陽性の有無も含まれている。

マラウイ保健省のHIV治療部門ディレクターを務めるローズ・ニイレンダ氏は、HIV陽性者が他と異なる扱いを受けているとするバンダさんの主張を否定する。

「それは事実ではないと思う」とニイレンダ氏は言い、喘息や結核でしきりに咳をしていれば、あるいは新型コロナ感染者と決めつけられる可能性はあるかもしれない、と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳が電話会談、ウクライナ和平とイラン核問題を

ワールド

カンボジア首相、タイに国境画定着手呼びかけ 軍の占

ビジネス

英CPI、1月は前年比+3.0% 昨年3月以来の低

ワールド

ラガルド総裁が任期満了前に退任とFT報道、ECB「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    ポーランドが「核武装」に意欲、NATO諸国も米国の核の傘を信用できず
  • 4
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 7
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 10
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中