ヨーロッパの航空業界、搭乗前検査で「陰性オンリー」便に期待
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欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。写真はマスクを着けた、独ルフトハンザ航空の従業員。6月17日、フランクフルト国際空港で撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。
政府による救済策を受け入れているドイツのルフトハンザ航空は現在、抗原検査の採用についてスイスの医薬品大手ロシュと協議中で、来月の実現を目指している。関係筋2人が明らかにした。
イタリアのアリタリア航空はロイターに対し、検査で陰性だった乗客のみ搭乗を認める対象に、ミラノ発ローマ行きの2便を23日から追加することを明らかにした。既にローマ発ミラノ行きの2便でこうした措置を適用している。
検査は空港で保健当局者が行い、料金はチケット代に含まれる。アリタリアは、抗原検査の安全性が確認されて人気を得られれば、他の国内便へも適用を拡大し、その後は国際便にも広げたいとしている。
この抗原検査はPCR検査と異なり、機器による処理を必要としない。妊娠検査のように約15分で結果を出すことができる。
ただ、鼻の粘膜を綿棒でぬぐうという不快な作業が必要な上、「偽陰性」が出る確率がPCR検査より高い。
抗原検査キットの種類は増えており、米アボット・ラボラトリーズ、米ベクトン・ディッキンソン&カンパニー、ロシュなどが手がけている。ロシュのキットは、韓国のSDバイオセンサーの製品をリブランド(商標やデザインを変更)している。
欧州では新型コロナ感染者数が再び増えているが、航空各社は各国政府に対し、一律に移動規制をかける代わりに抗原検査の活用を認めるよう迫っている。
国際航空運送協会(IATA)のトップは22日、非医療スタッフが行える迅速な抗原検査が、数週間中に1回7ドルで入手可能になるとの見通しを示した。
陰性オンリー便
抗原検査には欠点もあるが、航空会社は人々に安s心してもらえるバランスを見い出せると期待している。
ロシュの研究開発マネジャー、クリスチャン・ポーラス氏は「特定の検査時点で、陽性、陰性のいずれであるかに信頼性を与えるものだ」と話す。
「PCR検査が最適な基準であるのは、これまでと変わらない。従って、何かしら疑問点が残ったり、抗原検査の結果が陰性でも発熱などの症状が見受けられたりする場合には、確認のための検査を確実に行うようにする」と述べた。