「ワクチンは安全」という信頼、日本は世界最低レベルだった
予防接種への国民の信頼は、ますます重要になっている...... Natali_Mis-iStock
<英ロンドン大学が、ワクチンの安全性や有効性、子どもに予防接種させる重要性についての見解を調査したデータの分析結果を明らかにしている...... >
世界規模での感染症予防において、予防接種への国民の信頼は、ますます重要になっている。世界保健機関(WHO)では、予防接種を受けたり、子どもに受けさせたりすることを躊躇または拒否する「ワクチン忌避」を「世界の健康に対する10大脅威」のひとつとして挙げ、警鐘を鳴らしている。
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)の「ワクチン・コンフィデンス・プロジェクト(VCP)」では、約10年にわたって、ワクチンに対する世論の動向をモニタリングしてきた。2020年9月10日に医学雑誌「ランセット」で公開した研究論文では、世界149カ国28万4381名を対象に、ワクチンの安全性や有効性、子どもに予防接種させる重要性についての見解を調査した2015年9月から2019年12月までのデータの分析結果を明らかにしている。
日本が低い理由は、子宮頸がん予防ワクチンの安全性への不安か
ワクチンに対する世論は、国や地域によって様々だ。2015年時点で、アルゼンチン、リベリア、バングラディシュの回答者の85%以上が「ワクチンは安全である」との見解を示した一方、日本ではその割合が8.9%と低い。また、ワクチンの有効性についても、エチオピアやアルゼンチン、モータリアで回答者の8割以上がこれを認めているのに対して、日本では14.7%にとどまっている。
研究チームでは、日本でワクチンへの信頼が低い原因として、2013年以降に広がった、子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の安全性への不安が関与しているのではないかと指摘している。フィリピンでも、2017年にデング熱ワクチン「デングワクシア」の安全性への懸念が広がったことから、ワクチンの安全性への信頼は、2015年時点の82%から19年に58%まで低下している。
欧州では、このところ反ワクチン運動が活発なポーランドでワクチンの安全性への信頼が下がっている一方、英国、フランス、イタリア、アイルランド、フィンランドなどで、その信頼が高まっている。ワクチンへの信頼が慢性的に低いフランスでも「ワクチンは安全である」との見解を示した回答者の割合が2018年11月時点の22%から2019年12月には30%に上昇。英国でも「ワクチンは安全である」との見解を示した回答者の割合が2018年5月時点の47%から2019年には約52%に上昇している。
政情不安や宗教的な過激思想により、ワクチンに否定的な世論が広がる傾向もある。アゼルバイジャンでは、ワクチンの安全性を否定する回答者の割合が2015年時点の2%から2019年には17%に上昇した。アフガニスタンやインドネシア、パキスタン、ナイジェリア、セルビアでも、ワクチンの安全性を否定する回答者の割合が2015年から2019年で上昇している。