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日本政治ポスト安倍 岸田政調会長、コロナ後の財政再建を重視 米中対立を懸念
安倍晋三首相が後継の本命として期待してきた岸田文雄氏(写真)は、政調会長として自民党のコロナ対策を指揮してきた。写真は都内で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
安倍晋三首相が後継の本命として期待してきた岸田文雄氏は、政調会長として自民党のコロナ対策を指揮してきた。必ずしも主導的な役割を演じきれていないとの見方もあるが、最近では特別措置法に補償金規定を盛り込む改定や雇用調整金の延長などの考えを示したほか、デジタル化構想やコロナ収束後の経済・安保政策の検討を進めている。
当面はコロナ対策に思い切った財政の投入が必要としながらも、収束後は財政再建が必要との立場を取る。金融政策もこれ以上のマイナス金利の深堀りには反対の姿勢だ。
外相としての経験も長く、米中対立への懸念は強い。中国による力を使った圧力に警戒感を示すほか、その情報戦略に対しも、党内で経済安保政策の提言を取りまとめている。憲法の範囲内で、国際ルールを重視した解決を目指す姿勢だ。
◎特措法の補償金規定
4月に取りまとめた新型コロナの緊急経済対策では、一定基準を満たした世帯に30万円を給付する案で安倍首相と合意したはずが、全国民に一律10万円給付する施策に取って代わられ、岸田氏の手腕に疑問符が付いた経緯がある。
最近では、新型コロナ対策の特別措置法について改正すべきとの立場を明確に表明。8月上旬のテレビ番組で、「自粛要請に応じた人と、応じずに営業した人とで不公平ではないかという議論がある」と指摘、要請に従った事業者への補償金を盛り込む改正が必要との考えを示す。
また、当面は財政を思い切って活用し、必要な対策を打つべきとの立場。政調会長として、雇用調整助成金の特例措置の延長やその他の対応策について、コロナとの戦いが長期化することを前提に、制度の延長が必要との考えをにじませてきた。PCR検査の拡充も必要としている。
◎コロナ禍中は思い切った財政出動
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は、金融市場に織り込まれていることから急に変更するのは弊害があるとの立場。
財政政策については、世界の景気は当面停滞し、金利上昇は見込みにくいとして、日銀のマイナス金利政策を背景に思い切った財政出動が可能だとしている。
ただ、1日の出馬会見では「マイナス金利はさらに深掘りできないとの議論もある」と指摘したほか、新型コロナによる危機克服後は、主要国が財政・金融政策の自由度を確保するため、金利引き上げを図る可能性があるとして、財政健全化もしっかり考えていくべきとした。
◎「デジタル田園都市」の実現が持論
派閥の先輩である故・大平正芳元首相の田園都市構想をテクノロジーで肉付けした「デジタル田園都市構想」を発表している。都市から地方への人口移動を前提に、経済を成長させるカギを握るデジタル化の姿を描いたもので、災害や感染症の大流行などが発生した際に、デジタル技術を活用することでリスクを減らすこと、在宅勤務やオンライン教育、携帯電話事業者が持つ人の動きに関するデータを活用することを盛り込んだ。
◎対中経済安保で提言を取りまとめへ
第2次安倍内閣が発足した2012年から5年間、外相を務めた経験もあり、外交への考え方は積極的に発信している。
中国を念頭にした経済安全保障の戦略として、党の政務調査会のもとに「新国際秩序創造戦略会議」(座長:甘利明税調会長)を立ち上げた。米中の対立が厳しくなる中で、コロナ収束後に日本がどうやって存在感を示していくのか、提言の取りまとめを目指している。
中国には強い警戒感を示し、2019年春の民間主催の国際会議で「東・南シナ海への進出や、技術取得の強引な手法には強い懸念を持っている。重要な大国だが、緊張感を持って付き合っていかねばいけない」と述べている。
「力ではなく、ルールに基づく秩序の中で生きていかねばならない」というのが基本姿勢。
◎憲法改正には慎重
厳しい安全保障環境の中でも、憲法9条とのバランスを取る努力が必要との立場。憲法改正の議論については「国民世論、周辺の国々の国民感情にもしっかり配慮した上で、丁寧に議論を進めないといけない」(民間国際会議での発言)と語っている。
(中川泉 編集:久保信博)
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2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。