最新記事

アメリカ大統領選挙

ケネディ対ニクソンから60年 アメリカ大統領選討論会の軌跡

2020年9月30日(水)19時38分

共和党の現職ドナルド・トランプ大統領(右)と民主党のジョー・バイデン候補(左)は大統領選に向け、テレビでの討論番組で対決する。バイデン氏の写真はデラウェア州ウィルミントンで、トランプ氏の写真はホワイトハウスで4日撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque/Leah Millis)

共和党の現職ドナルド・トランプ大統領と民主党のジョー・バイデン候補は、29日、大統領選に向け、テレビでの討論番組で対決する。テレビ討論は、現代の米国政治史において最も記憶に残る瞬間に彩られた、60年に及ぶ伝統である。

1960年 ケネディ vs ニクソン
民主党が指名したジョン・F・ケネディ候補と共和党のリチャード・ニクソン副大統領のあいだで、初のテレビ討論が行われた。ニクソン氏は病院から戻ったばかりで、テレビ出演用のメイクも拒んだことから無精髭が目立った。7000万人の視聴者は、両候補の言葉よりも見た目に注意を惹かれた。ケネディ候補が当選した。

1976年 カーター vs フォード
16年ぶりにテレビ討論が行われ、民主党のジミー・カーター候補が、選挙を経ずに副大統領から昇格した共和党のジェラルド・フォード大統領と対決した。フォード氏の「東欧はソ連の支配下にはなく、フォード政権が続く限り、将来もそうならないだろう」という言葉は重大な失言と見なされた。カーター候補が当選した。

1980年 レーガン vs カーター
カーター大統領は、独立系のジョン・アンダーソン候補も参加した初回のテレビ討論をボイコットした後、2回目の討論に共和党のロナルド・レーガン候補と共に出演した。カーター大統領は、高齢者対象の医療保険「メディケア」の削減を計画しているとしてレーガン候補を批判した。レーガン候補は、かねてからカーター氏が多くの問題について対立候補の立場を歪めて伝えていると批判していたが、「ほら、またやっている」と苦笑してみせた。この言葉が視聴者の笑いを誘い、その後のキャッチフレーズになった。レーガン候補が当選した。

1984年 レーガン vs モンデール
民主党が指名した56歳のウォルター・モンデール候補に対し、73歳のレーガン大統領は、次のような皮肉で自身の高齢という弱点をはぐらかした。「申し上げておきたいが、私はこの選挙戦において、年齢を問題視するつもりもない。政治的な目的で、対立候補の若さや経験不足につけ込もうとは思わない」 レーガン大統領は再選された。

1988年 ブッシュ vs デュカキス
共和党候補のジョージ・H・W・ブッシュ副大統領と民主党のマイケル・デュカキス候補との討論は、「あなたの妻を強姦し殺害した犯人の死刑を求めるか」という質問から始まった。批判派から「アイスマン」と揶揄されていたデュカキス候補にとって、この質問は人情味溢れる側面を示すチャンスだったが、生真面目な対応を見せたことで台無しになった。ブッシュ候補が当選した。

副大統領候補どうしの討論は、ブッシュ候補の相方であるダン・クエール候補が、自分の政治経験をジョン・F・ケネディと同程度だと述べたことで熱を帯びた。民主党のロイド・ベンツェン候補は静かに、淡々と言った。「上院議員、私はジャック・ケネディの同僚だった。彼を知っているし、私の友人だった。上院議員、あなたは断じてジャック・ケネディではない」

1992年 クリントン vs ブッシュ vs ペロー
このときは3人の候補者だった。ブッシュ大統領、民主党のビル・クリントン候補、独立系のロス・ペロー候補である。クリントン候補が当選した。

1996年 クリントン vs ドール
クリントン大統領との討論の際、共和党のボブ・ドール候補に対して、ある学生が「73歳という高齢では、若い人々が何を求めているか理解できないのではないか」と質問した。ドール候補は、自分の年齢になれば、知性と経験がもたらす叡智という優位がある、と答えた。するとクリントン候補は、こう反撃した。「ドール上院議員が大統領になるのに高齢すぎるとは思えない、ということだけは言える。しかし、私が問題にしたいのは、彼の理念の古さだ」 クリントン大統領は再選された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突

ビジネス

基調物価が2%へ上昇するよう、緩和的な金融環境維持

ビジネス

コマツの4ー12月期、営業益2.8%増 建機販売減

ビジネス

安定した物価上昇が必要、それを上回る賃金上昇も必要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中