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韓国映画界に変革の波? ジェンダー差別のない優秀10作品を政府と監督協会が選定

2020年9月22日(火)17時19分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国では男性を主人公にしたアクションや、クライム/ノアール系ジャンル映画の人気が高く、多く製作されるため仕方ないのかもしれない。しかし、監督は主人公に自信を投影してシナリオを書き、作品を作り上げることがある。今回韓国で推薦映画に選ばれた作品のように女性監督が増えれば、今より女性に共感を呼ぶ作品がもっと生まれるはずだ。

今月1日~7日、韓国ではこのテスト名から「ベクデル・デー2020」というイベントが文化体育観光庁の政府主催で開催された。ジェンダーの平等化をコンセプトに、映画作品の内容はもちろん、撮影現場での差別をなくすためのシンポジウムなども行われた。

その中で、映画評論家であるチョ・ヘヨン氏は、「2009年から2018年の10年間に制作された韓国映画のうち約半分しかベクデルテストに合格することが出来なかった」とし、「その作品のうち女性監督の映画は、2009年で15.2%から2018年には12.8%と実は減少傾向にあった」「スタッフや制作側の女性の比率は約20%程度とまだまだ男性社会である」と語っている。

女性キャラの重要度も考慮せよ

一方で、このテストには賛否両論あるのも確かだ。基準を男女のみで判定する点や、出てくる女性キャラクターの重要度ではなく人数のみで判断している点が問題視されている。ハリウッド映画『パシフィック・リム』は、主要女性キャラクターが菊地凛子のみであり当然ベクデルテストは合格していない。

しかし、菊池凛子氏演じるマコは1人でも強烈な印象を残している。これにちなんで、「マコ・モリ・テスト(菊地凛子の役名"森マコ"が由来)」がネットユーザーを中心に作られた。テストクリアの条件は、「劇中1人以上の女性キャラクターが登場し、彼女自身の物語があり、その物語は男性キャラクターを支えるためのものではない」ことが条件だ。

韓国はここ数年MeToo運動やフェミニズムの意識が高まりを見せている。国が率先してこのようなキャンペーンを開催するのも進んでいる証拠だろう。日本では一体どれくらいの作品がこのテストをパスすることができるだろうか。また、ベクデルテストの存在すら知らない人も多いのではないだろうか?

これからしばらくは、こういったテストを基準に男女の平等化を守っていくことは大事だが、いつの日か登場人物の性別を意識しなくなり、わざわざベクデルテストなどする必要のないバランスの取れた映画界になることを願っている。


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