韓国映画界に変革の波? ジェンダー差別のない優秀10作品を政府と監督協会が選定
北海道の小樽でも撮影が行われた『ユンヒへ』は、20年以上会っていない初恋の女性から母への手紙が届き、それを知った娘が母親と共に日本へ会いに行くストーリーである。韓国では珍しい女性同士のクィア映画であり、さらに中年女性同士の愛情をフィーチャーした点はかなり話題となった。
公開後からすぐに話題となった『フランスの女』は、観客動員数1万人を超えると成功と言われる韓国インディーズ映画業界において1週間でそれを達成し注目を集めた。
不倫によって壊れていく2つの家庭を描いた、俳優キム・ユンソクの監督デビュー作『미성년(未成年)』は、キム・ユンソクが父親役で出演し、彼お得意のシリアスな中にユーモラスな演技を見せている。
ほかには、スポーツを通して女性を描くのは、134キロの速球を投げる優秀な投手でありながら、女性というだけでプロ野球選手になれない苦悩を描いた『野球少女』。公務員試験に何度も挑戦するも失敗し続けてきた31歳の女性がランナーと出会い、韓国のキャリア社会や年齢に縛られず、自分の理想を見つけていく物語『아워 바디(Our Body)』。
家庭の問題を解決すべく立ち上がった3人の女の子の話『我が家』。ファンタジーコメディー要素を多く含みながらある女性プロデューサーの生活を淡々と綴る『チャンシルは福も多いね』。大阪アジアン映画祭2019で公開された理不尽コメディ『메기(なまず)』が選ばれている。
10作品中7作品が女性監督
以上10作品が今回選定された作品なのだが、特徴としては女性の人生や生き方にフォーカスを当てている点があげられる。また、監督が10作品中7作品で女性という点も注目されるところだ。
筆者が韓国で就職した2社目の会社は映画の制作会社だった。多くの映画を企画し制作していく中で、当時から現場では「韓国映画は女性が主人公の映画は少ない」「俳優は足りないけど女優は余っている」と言われてきた。