新自由主義が蝕んだ「社会」の蘇らせ方
“COMMON” CAN WIPE OUT NEOLIBS
現在、医療や食品販売などの「エッセンシャル・ワーク(不可欠な労働)」が耳目を集めている。私たちの生活がいかなる共有(コモン)の物資や労働に支えられているかが、改めて浮き彫りになったのだ。そして、言語を基礎とするパブリックなものに対して、コモンは言語(そして国民国家)の枠には必ずしもとどまらない。
そのコモンとは例えば自然環境だ。新型コロナの出どころはまだ確定していないが、2000年代以降繰り返している豚インフルエンザや鳥インフルエンザは、工業化されて伝染病に対して脆弱な集産畜産業(factory farming)を原因としていると専門家は指摘する(英ガーディアン紙、4月20日)。
アレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員らが提唱するグリーン・ニューディールは、環境と福祉を同時に解決しようとするという意味で、中・長期的な「コロナ対策」たり得る。しかし、その政策はアメリカ一国の枠を越え出る必要がある。環境に働き掛ける第1次産業の在り方とパンデミックの頻発に深い関係があるとすれば、その解決は、産業と自然環境が、グローバルな水準で「われわれのコモン」であるという認識からしか生じ得ないだろう。
その場合の「われわれ」は、特定の国民ではなくグローバルな市民と言うしかない共同体である。私たちは「福祉国家」ではなくグローバルな共同体/社会の福祉を想像し直さなければならない。
社会は(いまだ)存在しない──ジョンソンのせりふとは裏腹に、私たちの出発点はそこなのである。
<2020年9月1日号「コロナと脱グローバル化 11の予測」特集より>
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