原爆投下75年、あの日アメリカが世界に核兵器をもたらした、と各国が非難
75 Years After Atom Bombs Drop, Nations Pan U.S. for Introducing Nuclear War
今も原爆投下の過ちを認めず、核軍縮にも逆行し始めたアメリカ(写真は1945年8月9日、長崎に投下された原爆のキノコ雲) U.S. Air Force/REUTERS
<核保有国も非保有国も、それぞれの立場から原爆の犠牲を悼み、アメリカの核政策を恨み、核廃絶を訴えた>
広島と長崎に原爆が投下されて75年、アメリカの外交政策に批判的な複数の国が、世界に核戦争を持ち込んだアメリカを強く非難した。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、広島に原爆が投下された8月6日、平和記念式典の参列者に向けてメッセージを発表。「罪のない民間人の痛ましい死は、今も地球上の多くの人の心に残っている」と述べた。第2次大戦の終盤に投下された原爆により、広島では15万人が死亡。広島の3日後に原爆が投下された長崎では、約7万5000人が死亡したとされる。
「(原爆投下の)背景に第2次世界大戦があったとしても、いったい何が、計画の首謀者たちをあのような無慈悲な行動に導いたのか。それを完全に理解することは難しい」とラブロフは語った。
さらにラブロフは、原爆投下は「戦争を終わらせるために必要だった」というアメリカの従来の主張を否定。ソビエト軍の部隊が東アジアを進軍し、日本に侵攻する構えをみせたことで第2次大戦は終結に近づいていたことは周知の事実だったと主張した。ラブロフは「原爆投下は武力の誇示であり、民間人に対する核兵器の軍事実験だった」と批判し、さらに「アメリカはこのような大量破壊兵器を使用した最初の、そして唯一の国だ」と強調した。もっとも、現在、世界で最も多くの核兵器を保有していると考えられているのはロシアだが。
アメリカの核合意離脱で対立激化のイランも
核兵器の保有が確認されていない、ほかの複数の国も声を上げた。
イランのジャバド・ザリフ外相は、ラブロフと同様のメッセージをツイッターに投稿。「75年前の今日、アメリカは世界で初めての、しかも唯一の核兵器使用という恥ずべき行いをした。しかも相手は罪のない人々だった」と述べ、さらに「こんにち、アメリカとイスラエルの核が我々の地域を脅かしている。核の悪夢と相互確証破壊(MAD)による核抑止という理屈を否定する取り組みは、もっとずっと前に終わらせるべきだった」と批判した。
アメリカは、イランが秘密裏に核兵器の開発を進めていると非難し、2018年には、イランが核開発計画を大幅に縮小することを条件に制裁を緩和することを決めた「イラン核合意」から一方的に離脱した。ドナルド・トランプ米政権が始めた「最大限の圧力」政策にイランが抵抗するかたちで、両国の緊張は高まっている。
イラン同様に、制裁と政治的孤立を狙う「最大限の圧力」政策の標的となっているのがベネズエラだ。アメリカと同盟諸国は、独裁者ニコラス・マドゥロをもはや同国の正式な大統領と認めていない。そのベネズエラのホルヘ・アレアサ外相も、広島への原爆投下から75年の日に合わせて声明を出し、原爆投下は「犯罪行為でありジェノサイド(集団虐殺)だった」と批判した。
<参考記事>30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義
<参考記事>オバマ広島訪問をアメリカはどう受け止めたか