最新記事

核兵器

原爆投下75年、あの日アメリカが世界に核兵器をもたらした、と各国が非難

75 Years After Atom Bombs Drop, Nations Pan U.S. for Introducing Nuclear War

2020年8月7日(金)18時10分
トム・オコナー

今も原爆投下の過ちを認めず、核軍縮にも逆行し始めたアメリカ(写真は1945年8月9日、長崎に投下された原爆のキノコ雲) U.S. Air Force/REUTERS

<核保有国も非保有国も、それぞれの立場から原爆の犠牲を悼み、アメリカの核政策を恨み、核廃絶を訴えた>

広島と長崎に原爆が投下されて75年、アメリカの外交政策に批判的な複数の国が、世界に核戦争を持ち込んだアメリカを強く非難した。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、広島に原爆が投下された8月6日、平和記念式典の参列者に向けてメッセージを発表。「罪のない民間人の痛ましい死は、今も地球上の多くの人の心に残っている」と述べた。第2次大戦の終盤に投下された原爆により、広島では15万人が死亡。広島の3日後に原爆が投下された長崎では、約7万5000人が死亡したとされる。

「(原爆投下の)背景に第2次世界大戦があったとしても、いったい何が、計画の首謀者たちをあのような無慈悲な行動に導いたのか。それを完全に理解することは難しい」とラブロフは語った。

さらにラブロフは、原爆投下は「戦争を終わらせるために必要だった」というアメリカの従来の主張を否定。ソビエト軍の部隊が東アジアを進軍し、日本に侵攻する構えをみせたことで第2次大戦は終結に近づいていたことは周知の事実だったと主張した。ラブロフは「原爆投下は武力の誇示であり、民間人に対する核兵器の軍事実験だった」と批判し、さらに「アメリカはこのような大量破壊兵器を使用した最初の、そして唯一の国だ」と強調した。もっとも、現在、世界で最も多くの核兵器を保有していると考えられているのはロシアだが。

アメリカの核合意離脱で対立激化のイランも

核兵器の保有が確認されていない、ほかの複数の国も声を上げた。

イランのジャバド・ザリフ外相は、ラブロフと同様のメッセージをツイッターに投稿。「75年前の今日、アメリカは世界で初めての、しかも唯一の核兵器使用という恥ずべき行いをした。しかも相手は罪のない人々だった」と述べ、さらに「こんにち、アメリカとイスラエルの核が我々の地域を脅かしている。核の悪夢と相互確証破壊(MAD)による核抑止という理屈を否定する取り組みは、もっとずっと前に終わらせるべきだった」と批判した。

アメリカは、イランが秘密裏に核兵器の開発を進めていると非難し、2018年には、イランが核開発計画を大幅に縮小することを条件に制裁を緩和することを決めた「イラン核合意」から一方的に離脱した。ドナルド・トランプ米政権が始めた「最大限の圧力」政策にイランが抵抗するかたちで、両国の緊張は高まっている。

イラン同様に、制裁と政治的孤立を狙う「最大限の圧力」政策の標的となっているのがベネズエラだ。アメリカと同盟諸国は、独裁者ニコラス・マドゥロをもはや同国の正式な大統領と認めていない。そのベネズエラのホルヘ・アレアサ外相も、広島への原爆投下から75年の日に合わせて声明を出し、原爆投下は「犯罪行為でありジェノサイド(集団虐殺)だった」と批判した。

<参考記事>30歳、福島出身──第三者が広島で被爆体験を語る意義
<参考記事>オバマ広島訪問をアメリカはどう受け止めたか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ

ワールド

トランプ氏、北朝鮮の金総書記と「コミュニケーション

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中