最新記事

2020米大統領選

トランプのツイッターで急浮上 米大統領選「悪夢のシナリオ」

2020年8月2日(日)12時40分

トランプ米大統領(写真)がツイッターで、郵便投票で不正が起きる懸念があることを理由に11月3日の大統領選の延期に言及した。米ワシントンで撮影(2020年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ米大統領が30日、ツイッターで、郵便投票で不正が起きる懸念があることを理由に11月3日の大統領選の延期に言及した。与野党双方の議員が早速反対の声を上げ、法律専門家も否定的な見方を示した。トランプ氏もその後、大統領選の延期は望まないと表明した。

だが、大統領選の結果が紛糾して決着までに数週間、場合によっては数カ月かかりかねない可能性も浮上している。

実際に起こりそうな事態と、その後に想定される展開をまとめた。

結果発表の遅れ

合衆国憲法は、大統領選の日程を変更する権限を持つのは連邦議会だけと定めており、現在下院の過半数を野党・民主党が握っている点からすると、選挙が延期される確率はゼロと言える。

しかし新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で郵便投票が広く活用されるとなれば、開票結果の発表が大幅に遅れる可能性は高い。

多くの州では、選挙当日後に投票済み用紙が到着することがあり得るし、選管担当者は手作業で開票し署名を確認しなければならない。既に今年、主に郵便投票方式で実施された幾つかの大統領選予備選は、当日から何週間も経過してなお結果が確定しなかった。

民主党は、そうした遅れが、不正が行われたとの主張を勢いづけると懸念している。同党大統領候補指名が確実なバイデン前副大統領の陣営から説明を受けたある人物は、トランプ氏が激戦州の投票所での得票差を根拠に11月3日当日中に勝利宣言してしまうシナリオにバイデン陣営が備えていると明らかにした。

その後に人口の多い都市部での郵便投票開票が進み、トランプ氏に不利な展開に「変わった」としても、同氏がそれを認めない「悪夢のシナリオ」だ。

法廷闘争

郵便投票や不在者投票に関する法的要件は、州によって署名の筆跡一致や消印、申請の締め切りなどを巡ってさまざまに違いがあり、こうしたことが開票集計の正当性を巡って与野党の双方からの訴訟を引き起こす可能性もある。

今年の大統領選予備選でも、郵便投票者の急増に選管担当者や郵便局職員が対応しきれなくなり、投票済み用紙の期日内の処理に途方もなく苦労することが露呈した。

自分に何の落ち度もないのに投票済み用紙の返送が期日までにされない人も、実質的に選挙権を失うことになるかもしれない。与野党が接戦となる州では、こうした状況が裁判所への異議申し立てを誘発してもおかしくない。

各州で起こされた訴訟は最終的に連邦最高裁まで行く可能性もある。実際、2000年に共和党のジョージ・W・ブッシュ、民主党のアル・ゴア両候補が対決した大統領選ではフロリダ州の再集計を巡る争いが最高裁に持ち込まれた。

保守派が過半数を占める現在の最高裁は、選挙戦が制限を受けることを総じて容認しがちだが、だからといって大統領選結果についてトランプ氏に肩入れするとは限らない、というのが専門家の見方だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、3万5000円を回復 米

ビジネス

マスク氏はテスラ経営に集中せよ 米民主党7州の財務

ビジネス

ダボス会議、創設者シュワブ前会長を調査 不正行為の

ビジネス

テスラ、第1四半期売上高が予想下回る マスク氏「経
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「利下げ」は悪手で逆効果
  • 4
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 9
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中